ようかめ だってさ ページ15
by河村
僕が伊沢の元へ向かうと、部屋からは話し声が聞こえた。声からして山本…らへん。山本と仮定して話していこう。
話の内容は、今まさに伊沢に話そうとしたことだった。黒い靄というのが聞こえた。そのとき、これは聞いてはいけない話だったのではという考えと、もっと聞きたいという思いが生まれた。「5歳くらいに視えるように…」山本も後から視えるようになったのか…。
するとイスから立ち上がった音がしたので、体が勝手に身を隠せる場所へ走っていた。
どうして隠れる!隠れる必要はないだろう!…今僕の方へ山本が来たらどうしよう。この状況はどうも言い訳はできない。足音はドアを閉めてから少し止まって、向きが変わるように一回音が出た後、反対方向へ歩き出した。足音が小さくなっていく。…気付かれただろうか。どちらにしろ後で山本には謝っておかなければ。そしてどんな話をしていたか聞かないと。
時間をあけて、タクシー数(拓司)から9(苦)が抜かれた部屋に入ると、伊沢の顔がこわばっている。
「…山本とどんな話してた?」
急すぎただろうか。
「そう大した話じゃねーよ」
「大した話だっただろ」
伊沢は何も言い返せないようで、そっぽを向いてる。
「俺も山本の話聞きたいの…伊沢の話を山本にもしたいし」
違う。
「…山本に話すのは好きにしろ。さっきの話はあいつから聞いて。…俺は脳の処理が追いついてない。」
違う。僕はお前らの仲介役に来たんじゃない。
「ねぇ…今日で悪いんだけど、黒い靄が視えるようになった原因の仮説を聞いてくれる?」
今日、僕はその話をしに来たんだ__
「そいつの話はもうやめろ!!」
僕は呆気に取られた。頭にはなんで?としか思い浮かばなかった。伊沢は頭を押さえている。
「__ごめん。…そいつの話、そんなに嫌だった…?」
頭を押さえたまま頷いた。
「…悪かったな。その…無理に話させて」
こうなるとどう声をかければ良いのかわからなくなった。喧嘩することが少なかったものだから…
「…俺も悪い。河村、また明日来て」
伊沢は最後に俺を見上げて、そう言った。
その後はもう病室を出るしかなかった…
作者から
CEOの観察日記、完結です。ありがとうございます!!
29人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:MOKKA | 作成日時:2023年10月17日 8時