【QK】夕焼ミステリー (ページ14)

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八日目ページ14

by山本

1人で行けないなんてことはなかったんだけど、どうしても涙が出て止まらなかった。おかげで聞きたいことが聞けなかったじゃないか。伊沢さんのためにも2人きりの時が良いから、だいぶ時間が経ってしまった。

病院の廊下の隅に黒い何かが視える。
いわゆる幽霊。亡霊。…悪霊かもしれない。それが何なのかはわからないが、時々視える。霊が集まってるとよく視えるらしい。…病院だからだろうか、いつもの2倍ぐらい視えている。嫌だなぁと思いながらエレベーターのボタンを押した。
伊沢さんも視えている。そう確信したのは須貝さんとたまたま出会った日。部屋をゆっくりと横切るそいつを、まじまじとみていた。須貝さんは黒いのではなく伊沢さんを見ていたから不思議に思っていたのだろう。
エレベーターから降りて、そこらへんのイスに座った。
伊沢さんに聞いていいのだろうか。一周考えてから決心し、立ち上がった。部屋番号を確認して、ドアを開けた。

「おぉ！山本！」
「また来ちゃいました！」
2人の顔が明るくなった。
「人がいると良いなぁ、1人だと何もできないしさ」
前は記事考えていると言っていたはずだけど。
「リハビリはどうでした？」
「いいかんじ。早く帰りてぇし」
良かった…そうだ言わないと。

「…伊沢さん今からする話は、この前僕に事故のこと言わせた仕返しだと思ってください」
「え…？」
伊沢さんが、わからないというような表情をした。そして僅かに目を見開いた。気付いたのだろう。
「…単刀直入に言います。伊沢さんもあの黒い霊…視えてますよね？」
「は、っなんで…」
____なんでわかった？…とは出てこなかった。
声になっていなかったのだ。

「そりゃわかりますよ。だって僕も視えているんですから…」
伊沢さんは驚いた顔をしたままだった。少しの間はそのままで、手を振ったら反応してくれた。
「それは…あの黒いのが、山本も見えているってこと…？」
「そういうことです」
そしてまた、時が止まった。
「なら、黒いのは何なのか…知ってる？」
「さあ、幽霊なのか悪霊なのかさえ知りません」
だからこそ怖い。
「山本は生まれつき？視えるの？」
「いや…5歳くらいに視えるようになりましたね…。なにがきっかけなのかわかりませんけど」
会話は続かなかった。
どうしようか全くわからなくなり、次の人が来たら嫌だから外へ出た。
「じゃあ…また」

足音が聞こえた。
…まぁいいや。