四十八話 ページ3
私が仲間の最期を口にすると、ハンジさんが泣きそうな顔になった。
私、なんでこんなこと言ってるんだろう。
こんなことでハンジさんを責めても何にもならないのに。
仲間の死を全て挙げて討伐について話しそうな勢いだったが、罪悪感が私にその言葉を飲み込ませた。
ハンジさんを傷つけてしまったことに気がついて、私は団長室の石でできた無機質な床を見つめる。
昔連れられた憲兵団の本部を思い出してなんとなく不安に駆られ、昂ぶっていた気持ちが少し収まった。
……今生きてる人まで傷つけてどうするんだ。
何とか自分の発言に収拾をつけようと私はもう一度口を開いた。
「全部……」
巨人のうなじを削いだときの感触を思い出して思わず拳を握る。
「全部、誰かを守れなかったときの討伐です」
私は兵士としての矜持でなんとか涙を堪えて最後まで言葉を続ける。
自分の不甲斐なさ、無力。
全てがこみ上げてくるようだった。
「……手違いなどでは、ありませんが、私の功績でもないです」
努めて冷静な声を作る。
感情的になってすみません、と頭を下げたとき、立ち上がったハンジさんが私の肩に手を置いた。
「ごめん、A……」
団長室に沈黙が流れる。
団長が咳払いをした。
「なあリヴァイ、Aの部屋の案内がまだだったな」
エルヴィン団長がを話題を変えてくれて私はほっとした。
「……ああ」
リヴァイさんはやっと少し視線を持ち上げて団長の方を見る。
「ハンジには調査書と、エレンの訓練を頼んでいるからね。まあエレンはしばらく動けないだろうが」
一体エレンは何をされているんだ。
しばらく会っていない幼馴染の安否が途端に心配になる。
「リヴァイ、行ってやってくれないか」
優しそうに微笑む団長。
……よく考えるとあんなに抱きしめられたあとでリヴァイさんと二人っきりは少し気まずい。
リヴァイさんが目を合わせてくれないのはそういうことか、とやっと思い至る。
「……さっさとこい」
リヴァイさんは無表情のまま立ち上がった。
「は、はい」
リヴァイさんに部屋に案内してもらうなんて懐しいな、と思いながらリヴァイさんの後を追おうとしたとき、エルヴィン団長が不意に話しだした。
「……A、調査用に捕らえた二体の巨人が殺されたのはもちろん知っているね」
扉に向かっていたリヴァイさんが足を止めた。
どことなく重々しい雰囲気を感じて、私は緊張しながら振り返った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 147人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「進撃の巨人」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ミカサ(プロフ) - ぐふぉっ(リヴァイの尊さにやられました) (2021年3月18日 15時) (
レス) id: 2cebe15e55 (このIDを非表示/違反報告)
はるこん(プロフ) - 麗紅花さん» お返事遅くなってしまいすみません。楽しんでいただけたならよかったです！そろそろ続きも書こうと思っていますので良ければぜひお読みください〜 (2021年2月28日 18時) (レス) id: af5768fbd2 (このIDを非表示/違反報告)
麗紅花(プロフ) - 作品を最初から最後まで読ませてもらいました！とても可愛くて純粋な恋愛で萌えました。リヴァイの性格も口調も上手く捉えていてスゴッ！！！と思いました。続きできたら是非とも読みに来ます！小説を頑張ってください！応援しています。 (2021年1月1日 15時) (レス) id: fa2fa0f152 (このIDを非表示/違反報告)
はるこん(プロフ) - 睡蓮さん» 最後の方は結構駆け足でしたよね笑 来年度に時間ができたら書きたそうかなと思っていますー読んでくださってありがとうございます！ (2020年5月3日 14時) (レス) id: 99f376c927 (このIDを非表示/違反報告)
睡蓮(プロフ) - こんにちは！作品一気に読ませていただきました！すごく面白かったです！リヴァイ兵長はきっとキャラや口調的に難しいと思うんですが、それを感じさせないぐらいすごく読みやすかったです！もっと先の物語も読みたいなって欲が出てしまうぐらいでした！笑 (2020年4月30日 1時) (レス) id: 56d089aaee (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はるこん | 作成日時：2020年3月19日 15時
