神様のいる世界

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「ただいま帰りました」
「おかえりなさい、祥彰。叔父さん。下界は疲れたでしょ？」
「そうなんです、お母様。早くお清めがしたい」
「そうね、穢れてしまう前に早くこっちに来なさい」
「僕初めてだから緊張するなあ」
「そうね、あなたも19歳になったものね」

お清めの部屋、とプレートが掛かった部屋に踏み込むと、そこはもう既に別世界だった
真っ暗な部屋に蝋燭の明かりが朧気に灯り、部屋全体にかかる薄く白い靄が視界をあやふやにし、辺りを甘い香りが包む

ここの部屋に来るとあたまがぼぅ、としてきた。これは神様に全て罪や穢れを落としてもらっている証拠だと叔父さんは教えてくれた

「神様、私たちの罪や穢れを取り去ってください」
「主である神様の幸福と将来の発展をお祈り致します」

叔父さんと二人でお祈りをし、カーテンの向こうに座る神様にお祈りを捧げる

19歳になったその日に初めて下界に降り、その日のうちにお清めをして、やっと1人前として認めてもらえる

これで僕も1人前なのだ、という幸福感に満たされ、蝋燭さえも僕を祝福しているという錯覚に陥る


カーテンの向こうからは何も返事はない。けれど僕らはそれでいいのだ。むしろそれが良いのだ

神様は人間なんかと交わってはいけないのだから

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