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あれから


伊沢さんや拓朗とは


普通に接することができた


けど、山本さんだけは


顔を見ると思い出して恥ずかしくなるから


避けるようなことをしてしまっている





そんなある日のこと


その日は、ついに


私の顔出し動画が撮影される日だった





撮影の準備に取り掛かろうとした時




『どうしたんですか


山本さん』



「どうしたんですか、じゃないですよ」



『なんで敬語なんですか』



「僕のこと、避けてませんか」




あまりにも顔を合わせようとしない私に


不信感を抱いたのか


山本さんにつかまってしまった





『避けてないです』



「ほら、目合わせてくれない」



『や、山本さ・・・』





両手で顔をつかまれ


無理やり山本さんの顔の方を向かされる


急激に熱が上がったような感覚


顔が火照っていくのを感じる


それぐらい、女の子にとってのファーストキスは


大きいものなのだ





「あ、いや、ごめん


そんな可愛い顔されると、キスしたくなっちゃうね」





顔を赤くして、いたずらっぽく微笑む山本さん


それは狙って言ってるのか


山本さんははたして、あの日のことを覚えているのかいないのか





『は、離してもらえますか』



「いや、避けてる理由教えてくれるまで


離さないからね」



『っ・・・』



「ねえ、俺なんかしちゃった？」





あれ、山本さん一人称俺だっけ


ほんとは俺なパターンか、可愛いから僕だと思ってた


そんなこと言ってる場合ではない





心配そうな目で私を見つめる


お願いします、そんな目で見ないでください


覚えてないならなかったことにしたい


でも、普通に接することは難しい


それに、言わないとこの状況から抜け出すことができない





『山本さんは・・・


歓迎会の日のこと、覚えてますか・・・？』



「歓迎会・・・


何かあったっけ」





やっぱり覚えてなかった


不思議そうに首を傾げている


罪な男だ





『やっぱ、聞かない方が・・・』



「だめだよ」





一か八かで言うしかない


結果がどうなるかは、もう知ったこっちゃない





『歓迎会の日、山本さん酔ってたみたいで』



「あー、あの日は確かに酔ってたかも」



『私の肩で寝ちゃってて』



「そうなの！？ごめんね、重くなかった？」



『それは全然いいんです、それは・・・』



「それはって？」



『寝ぼけてたみたいで


キス、されたんですよね・・・』







・







「っ！？」

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