独りよがり ページ18
22:15 渋谷駅構内
七海「…Aさん。」
今までの沈黙を破るように、私はAさんに問いかける。
A『…どうしました？』
七海「先程…地震がありましたよね？」
A『ありました…？』
七海「(あれほどの地震で気が付かない…？！何故だ…？！)」
七海は動揺をうまく隠しつつ、Aに問いかける。
七海「あれほど大きな地震に…気が付かなかったのですが？」
A『……？』
七海「あなたが一般人救出作戦から抜け出した後です。」
A『…………。』
七海が、Aの返答が無いと横を見れば、Aが俯いて、眉間に皺を寄せ、
片目を抑えている顔が映る。
七海「Aさん…？」
A『……！あぁ…、ごめんなさい、話の途中でしたよね…？
私ったら…寝てしまっていて…。』
七海が声をかけると同時に、Aは慌てた様に片目から手を離した。
その一瞬で、1秒にも満たぬ間に、Aの目の色が違くなったのを
七海は見逃さなかった。
七海「………。」
今度は七海が黙る番だった。
七海「(今の言葉は…きっと嘘だ。
あれだけ黙っておいて、アレを「眠っている」と嘘をつく方が難しい…。)
…えぇ、救出作戦の話です。」
A『私は、地下ホームに向かって呪霊を祓っていました。
その後に…五条先生が封印された…。
恐らく、その時です。』
七海「…なら、良いです。分かっているのなら。」
しばらく、沈黙がその場を支配する。
その沈黙を破ったのは、Aだった。
『…七海さん、』
「ナナケン」とは違う、変わった呼称。
何かある、と私は悟った。
沈黙を破ったその声は、あまりにも儚く、渋谷の街に消え入りそうだった。
『…生きて、ますよね？』
「…？」
『何で…あの時、嘘をついたんですか？』
「嘘…というのは？」
『決まってるじゃないですか…姉さんです、まだ…植物状態ですよね？』
「今更…何を言ってるんですか、貴方という人は…。
忘れたとでも言うのですか、あなたのお姉さんの死を…！」
『違います…さっきは成り行きでああ言いましたけど…
まだ、命は繋がってます…信じたいです、まだ、この世界から消え去って
居ないという事を…！』
「……生きているかどうかは、現実を見て、
貴方の目で、確かめて下さい。
私に言える事は…ただそれだけです。」
『……………。』
「…現実から目を背けるという事が、背信になりますよ。」
『………。』
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作者名：神樂颯稀(Macoron) | 作成日時：2021年10月23日 20時
