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机に向かい始めてから1時間が経ったけど5問しか解き終わらなかった。
まだ21時なのに頭を使いすぎたからか眠たくなってきた。
集中力も切れてきて気分転換にベランダに出ることにした。
窓を開けてベランダに足を踏み出して気がついた、
隣の家のベランダにも人がいることに。
暗くたってすぐに分かる。そこにいるのは廉くんだ。
廉くんも私に気づいたみたいだった。
｢よっ｣
廉くんが手を振ってくれたけど、むしゃくしゃしていたことを思い出して無視して部屋に戻ってしまった。
なにしてるんだろう。私。
そんなことを思っているとスマホが鳴った。
相手は廉くんだった。
私は迷うよりも先に電話に出ていた。
｢あ、出た｣
｢…うん｣
｢どしたん。なんか元気なくない？｣
その聞き方がなんだかすごく優しく思えてさっきしたことを反省した。
｢普通だよ｣
｢そお？｣
｢今何してんの？｣
｢勉強。数学の課題出されちゃってね｣
｢数学？解けてんの？｣
｢うん、まあうーん？｣
問題文とにらめっこをしながら曖昧に答えた。
｢それ解けてない反応やん｣
｢へへ。でもまあ大丈夫。頑張る｣
廉くんの声が聞けただけで少しやる気が沸いてくるなんて単純すぎるよ。
そんなことを思っていたら
｢Aちょっと待ってて。優しい廉くんが教えに行ったる｣
｢え？いやいやいいよ｣
想定外のことを言い出すからつい早口になってしまう。
｢なんでよ。その方が早く終わるやろ｣
いやでも悪いよ…。
そう答えたかったのに電話が切れてしまった。
本当に来るみたいだ。
さっきまでまるでなかった緊張感が走る。
私はとりあえず玄関に向かった。
電話が切れてから30秒もしないうちにチャイムが鳴らされた。
｢ほんとに廉くん来たんだ｣
｢行く言うたやん｣
私は廉くんを中に通した。
｢来なくてもよかったのに｣
｢その言い方は冷たない？｣
｢だって廉くんだって忙しいでしょ？今日も部活あって疲れてるんじゃないの？｣
私のせいで負担が増えたらそれは嫌だもの。
｢そんなん気にせんでええから。
それに家で1人でおんのも寂しいやろし｣
その言葉で廉くんが私を気にかけてくれていたことに気がつく。
お母さんと二人暮しで、お母さんは出張に行くことが多いから今日みたいに家で一人でいることもよくある。
｢ありがとう…｣
それを聞いたからか廉くんは微笑んでくれた。
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作者名：來
| 作成日時：2021年8月5日 1時
