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｢はぁ…こんなの終わるわけないじゃん…｣
数IIの授業で行われた抜打ち小テストで10問中1問しか正解できなかった私は担当の先生から特別課題を出された。
提出期限が明日までってあの先生は鬼なのかもしれない。
今日は徹夜だなって思いながら下駄箱に向かっていた。
ふとグラウンドに目を向ければ、サッカー部が練習をしている最中だった。
すぐに私は1人の男子生徒を目で追ってしまう。
かっこいいなぁ。廉くん。
あんなにイケメンでサッカー部って少女漫画に出てきそう。
ボールを追う廉くん。そんな廉くんを追う私。
汗を拭う姿さえかっこよく見える。
あーあ、もっと廉くんを見ていたい。
できることならそうしたいけど、今日はさっさと家に帰って課題を片付けなくちゃいけないから我慢。
今日はついてない。そういう日なんだ、きっと。
｢うわっ！｣
突然誰かに肩をぽん、ぽんと叩かれて分かりやすく驚いた声が出てしまった。
誰かと思って振り向くとそこにいたのは
｢え…｣
これまた整った顔の平野先輩だった。
｢やっぱりAちゃんだ。何してんの？｣
平野先輩は私が驚いていることなんか少しも気にしていなかった。
しかもナチュラルに会話を始めようとしてくる。
まだ知り合って日が浅いのに。ていうか、知り合ったって言うのかな。
｢先輩こそ…なんですか急に｣
｢俺今友達待っててさ、暇なんだよね｣
それで偶然ここにいた私に話しかけたの？
｢ねぇ、ちょっとでいいから俺の話し相手になってくんない？｣
平野先輩はズルいと思う。
この柔らかな笑み。これで頼まれたら断りにくい。
｢えっとでも…｣
私には課題があるし。これは断らなきゃ。
｢サッカー興味あんの？｣
｢…え？｣
｢ん？見てたから｣
先輩の話し相手になるなんて言ってないのに勝手に話を始められてしまった。先輩のペースに飲み込まれてる。
｢もう…｣
こうなると会話を続けないほうが失礼に当たるかもしれない。
そう思って少しの間先輩の相手をすることにした。もちろん乗り気じゃないけど。
｢サッカーは…別に｣
廉くんが部員だから見ているだけなんて本当のことは言えないけど。
｢へぇ。じゃあなんで見てたの？好きなやつでもいるとか？｣
｢え、｣
私は先輩の顔を見て固まってしまった。
ふざけて言ったのか本気でそう思ったのか。
｢あれ…図星だ？｣
平野先輩は得意気に笑う。
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作者名：來
| 作成日時：2021年8月5日 1時
