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そう言って口角を上げた先輩の顔がゆっくりと近づいてくる。
｢な、なんですか…｣
あまりにも整った顔が目の前に来るものだから体が強ばってしまう。
どういう状況？
私、何されるの？
まさか、と思って瞬時に目を強く閉じた。
だけど
｢…痛っ｣
おでこに痛みが走って、うっすらと目を開けた。
｢ふふ、ごめんごめん｣
先輩はこんな私が面白くて仕方ないかのように笑っていた。
｢ちょっと、何するんですか｣
｢だってなんか色々と勘違いするから｣
勘違い…？
｢勘違いってなんですか…｣
｢俺がお友達になる？って言ったら変なこと想像してたでしょ？けど安心して。そういうの、ないからね。｣
｢…っ｣
なによ…。
先輩の言い分を聞いてなんだかとてつもなく恥ずかしくなってきた。
顔に熱が集まるのを感じる。
｢大丈夫、俺はAちゃんに手出したりしないよ｣
そう言ってくれた先輩の瞳を見て、さっきまでの自分を叱りたくなった。
だって先輩に申し訳ない。
｢私…ごめんなさい｣
｢ううん。俺がいつもあんなんだからね。疑われても仕方ないよ｣
｢でもじゃあ、どうしてお友達なんて？｣
疑問だった。
下心なしで私と友達になるって、先輩にはなんのメリットがあるんだろう。
｢楽しいから、かな｣
｢楽しい？｣
先輩は大きく頷いた。
｢Aちゃんといると純粋に楽しいんだ。こういうの新鮮で。
だからもっと仲良くなりたいって思って｣
あまりにも真剣な眼差しを私に向けてくるから調子が狂う。
けど、嘘じゃないんだって分かった。
｢ごめんね、痛かった？｣
私のおでこに触れる先輩。
そういえば私さっきでこぴんされたんだった。
｢別にもう痛くないですけど…。
さ、さっきのはなんだったんですか。急に顔近づけて…｣
｢あーそれは、Aちゃんが変なこと想像してるのが面白くって。つい意地悪したくなっちゃったんだよ｣
意地悪したくなった？
なんだそれは…。
｢先輩…｣
｢そしたら狙い通りの反応をしてくれた。ほんとかわいいね、Aちゃん｣
いたずらっ子のように笑うけど、こっちは全く笑えない。
｢先輩のバカ…。からかうなんて最低です｣
｢え、｣
｢もう帰ります｣
恥ずかしすぎて今すぐ先輩の前から消えたくなった。
すぐに席を立とうとしたけれど、
｢待ってよ、まだ帰っちゃだめ｣
手首を掴まれていとも簡単に阻止される。
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作者名：來
| 作成日時：2021年8月5日 1時
