ライラックの花【東京喰種×暗殺教室】 (ページ7)

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Five stories ページ7

Aside

｢唐突だか貴方はどっちを主食とする｣

｢……烏間さ……烏間先生はどちらを食べると思います？｣

軽く首を傾げてみせる。
先生の眉がピクリと動いた。
2つのトレイを交互に視線だけ向けてから告げる。

｢俺は右だと思っている｣

──右。
つまり、この腐ったような匂いのする物の方だ。この先生は私が喰種だと分かって呼んだのではなかったのだろうか。

｢……残念ながら、私はどちらも食べることができますよ。消化までもできます。……片方はとても不味く感じますがね｣

｢！つまり、Aさんは──｣

｢自分で考えておいてください。自分の口ではあまり言いたくありません｣

汗が滲んできた烏間先生にやはりこの人も人間だなと感じながら笑って告げる。
部屋から出ていこうとする私を烏間先生が呼び止める。足を止めて振り返る。

｢俺はどちらだとしてもAさんを一人の生徒として守るつもりだ。だから安心して過ごしてほしい｣

正直、驚いた。
次に烏間先生の目を見ると偽りなんてなかったから。微かに口角が上がるのが分かった。
私は何も言わずにそのまま踵を返してから部屋から出た。
嗚呼、あの肉の匂いが鼻にこびりついて離れない。
最近は喰種の肉をほんの少しだけ食べていた。いや、本当のことを言えば姉さんの血と、ほんの少しの肉を食べた。
少しだけでも食べなければと言われて差し出された。同じ喰種の肉を食べるのは気が引けたが、これも姉さんの愛だと思ったら涙が滲んできて、いつのまにか軽く噛み付いて血を吸って、少しだけの肉を食べていた。

思い出しただけで涙が出てきそうだ。
──今日にでも、久しぶりに食べに行くか。
人間は嫌い。でも人間はあまり食べたくない。散る姿があまりにも惨めで、あまりにも美しいから。もう自我を失ってしまうのではないかと言う感覚に陥ってしまうのだ。

嗚呼、こんなことばかり考えていたらいつの間にか赫眼が現れてしまいそうで怖い。

考えるのはやめだ。諦めよう。