検索窓
今日:3 hit、昨日:10 hit、合計:59,622 hit

えぴそーど1 ページ12

「Aはこちらで引き取る」


結城の言葉に禁断の果実、Kは困惑した。

顔には出さなかったが内心、耳を疑った。

できるものなら目も、長年仕事で研ぎ澄まされた感覚も疑いたかった。

だが、正真正銘目の前にいるのは自分をスパイに育て上げた実の父親、有崎晃だった。

Kが知る限りでは父親である有崎晃はドイツにて死んだはずだった。

死んだところをこの目で確かめたわけではなかった。死んだと日本軍から通達があったのだ。


(まあ、簡単にくたばる人ではないとは思っていたけど、ここまでとはね…)


どうやら有崎晃は死に、結城中佐という男が生まれたようだ。

普通の親子ならこの場面を感動の再会とでも言って、喜びに浸るのだろう。

だがKにはそれができなかった。

できるはずがなかったのだ。A同様、有崎晃を父親と思ったことがなかったからだ。

師匠と教え子。それだけの関係、だと。


「へぇ。僕からまた大切なものを奪い取るの? …許すとでも思ってるの? 自惚れるなよ、師匠」


Kは結城を強く睨んだ。

確かにこれまでAにしてきた仕打ちを考えれば、こんなセリフを吐く事は許されないだろう。

だが、相手が結城ともなれば話は別だ。

たった1人の妹は譲れないものだったのだ。


「そうだろうな。貴様が簡単に頷くとは思えん。…Aと貴様はスパイとしてまだ未熟なのだ」

「は? 未熟?」

「貴様らがこれまでにしてきた任務を調べたが痕跡を残しすぎだ。特にAはな」

「…だからここで匿うって? だけど生憎、あの子のフォローくらい僕1人で充分。貴方が出る幕はないよ」

「これを見ても言い切れるか?」


結城が横した書類をKが見るなり、顔をひそめた。

なぜならその書類にはイギリスの外交官が任務中のAを見かけ、一目惚れし血眼でAを探しているという内容だった。

あまりにも馬鹿馬鹿しい。


「…殺せばそっちがAを引き取る必要ないよね?」

「笑えない冗談だな。『弓弦』」

「その名で呼ぶな!!!!」


Kは結城に書類を投げつけた。

えぴそーど2→←粋も甘いも2



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (96 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
144人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

えもん(プロフ) - 瑠璃(仮)さん» コメントありがとうございます!!実井は余裕だろうなあ、思いつつ書いてたのでキュンキュンしてもらえたなら嬉しい限りです!!更新頑張らせてもらいます!!!! (2016年8月11日 20時) (レス) id: fbc751c778 (このIDを非表示/違反報告)
えもん(プロフ) - ミコル・リアさん» コメントありがとうございます!!これからも頑張らせてもらいますね!! (2016年8月11日 20時) (レス) id: fbc751c778 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃(仮)(プロフ) - 実井くんの余裕綽々とした態度がキュンキュンします(*´罒`*)これからも更新楽しみにしてます!頑張ってください! (2016年8月8日 16時) (レス) id: 586ec9aef4 (このIDを非表示/違反報告)
ミコル・リア(プロフ) - すごく面白くて大好きです!これからも頑張って下さい! (2016年8月5日 21時) (レス) id: 3d9f6a0a6f (このIDを非表示/違反報告)
えもん(プロフ) - 瑠衣さん» コメントありがとうございます!!まさかの禁断の果実にファンが!!やはりパラレルなので幻滅されるかと思ったんですがそう言っていただけると嬉しいです!!応援に応えれるよう頑張ります!! (2016年7月30日 20時) (レス) id: fbc751c778 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:えもん | 作成日時:2016年7月27日 12時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。