7（side:you） ページ7
時間が過ぎるのは、早く。
後夜祭が始まろうとしていた。
友達に誘われて。
浴衣を着てみる。
須貝くんに、見せたいなんて、思ってない。
と、セルフで弁明をしてしまうあたり。
重症だな、と思った。
---
友達は、
先輩と別れたわたしに気をつかって、
一緒にいてくれていた。
友達に好きな人がいることを
知っていたから。
友達の優しさに感謝して。
そっと、背中を押した。
特有の、浮き足立つ、なんともいえない、空間。
なんだか、ひとりになりたくて。
かつて毎日通っていた、部室に向かった。
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向かいの部室の前。
段差になっているところ。
須貝くんが、ひとりでいる。
『あれ、
A、
こんなところでどーしたの。』
『須貝くんこそ。
…彼女さんは？』
『あー、
うん。
文化祭の実行委員会のメンバーで、いろいろあるらしい。
それよりさ、
A、浴衣似合うね。』
このあたりが、暗くて助かった。
顔、絶対赤くなってる。
ストレートすぎて、対応できない。
『ありがとう、』
声にならないような、声。
『Aが可愛すぎて、
これ以上、
ふたりでいるの、しんどいから。
俺、行くね。』
甘い展開を1ミリも期待してなかった、
といったら嘘になる。
そもそも、人のもの、だ。
わたしは言葉の意味を考えることもなく、
須貝くんが立ち去ってしまった、
という事実がダメージで。
頭がすーっと、冷えていくのを、
感じていた。
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作者名：345 | 作成日時：2022年9月21日 0時
