02 別れと約束 ページ2
だけど別れはあまりにも突然過ぎたのだ。
塾から帰ってきて、何の気なしに机を見たら見慣れないオルゴールと、１通の手紙。
なんだろう、と疑問に思ってその手紙を手に取ると、Aの文字が後ろに小さく書かれてた。
嫌な予感がした。
できることならその手紙を読みたくないと思った。だけど読まなければ後悔するとも思った。
□ キュヒョナへ
─キュヒョナとはずっと一緒にいたからいまさら手紙書くのなんてちょっと照れくさいや(笑)
こんな形で伝えることになってキュヒョンは怒るだろうけど、私日本に帰ることになったんだ。
心臓が張り裂けそうだった。
信じられるはずがなかった。
─信じられないかもしれないけど、ほんとだよ！ほんとはずっと前から決まってたことなんだ。もっとはやく言わなくちゃって思ってたけど言えなかった。キュヒョンとの時間が何よりも幸せだったんだ。それを壊したくなかった。
Aの両親は日本人だった。
Aが生まれてまもないころ韓国へやってきたと言ってた。
─今までありがとう。こんな形でサヨナラをしなきゃいけなくて、ごめん。
夜なのに蝉がうるさくて内容が頭に入ってこない。
─私ね、ほんとうにキュヒョンの幼なじみでよかった。キュヒョンの歌が大好きだった。
「オンマ！Aは？！」
「今日の21時の便で発つって言ってたけど…」
─キュヒョンの声を聞くと悩みも何もかも吹っ飛ぶの。
走った。
タクシー捕まえて、空港へ向かう。
こんな終わり方嫌すぎる。
そして今会えなければ一生会えない気がする。
─もしキュヒョンが…少しでも歌うことが好きなら歌い続けて？
あと、10分でAが僕から離れる。
嫌だ、いやだ、イヤだ、
─そして、お互いの夢が叶ったとき
空港についた。
だけどダメだ、間に合わない。
タクシーを飛び降りる。
─また絶対に会おう
夜空に大きな点滅が飛び立った。
あの中にAがいるのだろうか。
─そして、そのときは…
不自然に切られた手紙を握りしめながら、夜空を飛ぶAに向かって歌う。
それは、きっと叫びだった。
喉が潰れても、どうでもよかった。
だけどその叫びは轟音に消されてしまう。
届け、届ケ、トドケ…！
あらん限りの声で叫んだ。
Aが大好きだと言った曲。
Aと歌った曲。
叫べども叫べも届かない声。
「うぁあああああああああああ」
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作者名：さぼ | 作成日時：2016年4月30日 2時
