01 昔の夢 ページ1
「Aちゃーん、あっそびーましょー!」
「いーいーよー!」
あの頃の僕のすべてはAだけだったんだと思う。
「何して遊ぶ?」
「ひみつの場所行こう!」
僕の手を引いて、近くの公園の、遊具の裏。
そこが幼い頃の秘密の場所。
子供がちょうど入れるくらいのスペースに、身を寄せて入る。
「キュヒョンは何になりたいの?」
「僕はねー、おいしゃさんになるんだ!」
「えー、おいしゃさん?キュヒョンおうた上手だから、かしゅになればいいのに」
「かしゅ?」
「そうかしゅ!歌でね、たーくさんの人を幸せにするんだよ!ねぇー、キュヒョン歌ってー?」
♪〜♪♪〜♪
「キュヒョンのお歌大好き!」
ふふふと笑ってみせたAにあの頃から僕はきっと恋してたんだと思うんだ。
隣の家にAは住んでて、生まれたときから何をするにも一緒だった。
幼い頃の僕は泣き虫で、いつもAの後ろばかりついていってたように思う。
「キュヒョン!もう10歳になるんだから泣かないの!」
「だってAがぁー」
僕をかばって、上級生の男の子にぶたれてたこともあった。
どうしてそんなことになったのことになったのか今では思い出せないけど、女の子のAが僕の代わりにぶたれたことが悔しくて涙が止まらなかった。
「これくらい平気だから!思いっきり叩かれたわけじゃないし!」
この時に僕は僕自身にAを守ると誓った。
僕らは中学生なった。
「ぎゅ!私ね!決めた!」
「何を?」
「私作曲家になる!」
「は?」
「だからぁー!キュヒョンが歌う曲を私が作るの!」
Aの父はそこそこ名の知れた作曲家で、曲を作ってるところを見せてもらったこともあった。
「へへ、これで私もキュヒョナと同じ夢をみれる」
父の背中を追う。
そんな意味でAは曲を作りはじめたのかもしれない。
だけどAの描く未来に僕があたりまえに存在してるのが嬉しかった。
高校1年の夏休み。
「キュヒョナさー、キュヒョナは歌い続けてね?」
ずっと、と強く念を押すAに不思議に思いながらも、とりあえず頷いた。
僕の部屋で扇風機を独占しながらスイカを食べるAと、ゲームに明け暮れる僕。
あたりまえの日常。
あたりまえの光景。
あたりまえが繰り出す日々がとてつもなく心地よくて、この空間が大好きだった。
75人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「K-POP」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:さぼ | 作成日時:2016年4月30日 2時