小悪魔の証明【qk】 (ページ25)

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疼愛（sgi）ページ25

(疼痛 side:you)

わたしは、都合の良い女、だ。

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連絡が来るのは、いつも深夜。

彼は、とても多忙な人だ。

彼とは同じ大学で、ふとしたきっかけで話すようになり。

何度かしたデートは緊張で大して話せなかった。

…歯車は、噛み合わず。

卒業に近づく頃は話す機会もなくなった。

彼は卒業式の日、大学に現れなかった。

………伊沢拓司。

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もう、会うこともないと思っていたのに。

大学の同級生同士が結婚することになり、

伊沢くんと再会した。

どうやって自分の家に帰ってきたのか、覚えていない。

手帳型のスマートフォンのケースを開くと、

伊沢くんの連絡先が書かれた名刺がしっかり入れられていて。

うれしいか、うれしくないならの二択なら。

うれしくないわけが、ない。

………………だけど、彼は。

もう、手を伸ばしては、いけない相手だった。

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『…………ん』

自分の家とは肌触りのちがう、リネン。

………須貝………？

明かりのついた扉を開けると、彼が振り向く。

『………A、さん？』

『…………ごめんね、須貝。…迷惑かけて。

あの、始発までリビングにいてもいい？』

須貝は、驚いたような顔で。

『……え、いや。ベッド。よかったら使ってください。

リネン類は変えたので』

『大丈夫。わたし、電車で……』

寝るから、と言おうとして。

手に持っていた、スマートフォンの

バイブレーションが、鳴る。

深夜2:00。

………こんな時間に、かけて来るのは。

『…………出なくて、いいんですか』

出たら、いい。

なのに、須貝の視線に囚われて。

………なんて、顔を、してるの。

『……………いや、違うな。出ないで、ください』

スマートフォンを持つ手に重ねられた、熱い、手。

『……それか、俺が一緒だって。

その男に教えてやってください。』

ぞくぞくと、体がふるえて。

こんなの。知らない。

須貝は、私からスマートフォンを取り上げて、

流れるように、通話ボタンを押す。

『……………今、いいところだから。邪魔しないで』

須貝の低い声に反応して、心臓が、うるさい。

……言い訳の言葉なんて、必要ない。

『……あとで、いくらでも、殴ってください』

わたしは、目の前で項垂れる須貝のことしか、

考えられなかった。