誰が為 (ページ25)

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リチャside ページ25

リチャside

正門「大晴とこじけんなら分かるかな。誠也くん、海馬の周りの血管が傷ついててん。」

大晴「海馬……記憶の中枢やんな？」

「そう。せやから、運動機能って言うよりは記憶喪失とか、そっちの後遺症が残りやすいらしいねん。」

小島「お医者さんに聞いたんですか？」

「うん。」

黙って話を聞いとった晶哉が、急に椅子から立ち上がって口を開いた。

晶哉「……せーやくん、おきてくださいよ。…ねえ。」

震える声で、力なく末澤を揺らす晶哉に誰も声をかけられんくて。

小島が、後ろから優しく抱き締めて、やっと動きを止めた晶哉。

そのまま椅子にゆっくり座ったけど、その直後に末澤の手を握りながら泣いてもうた。

できれば、いったん末澤から離して落ち着かせてあげたいけど、職業柄あんまり病院に居るのがバレるのは良くないねんな。

ここに居る全員がそれを分かっとるから、誰も「落ち着くまで病室から出てみる？」って提案はせぇへんし、晶哉もそれを口に出すことはない。

今まで涙を見たことがなかった晶哉の涙を見るのはこの１週間と何日かで２回目。

……末澤、俺らの大事な最年少泣かせんなや。

…………起きろよ。

いろんな感情が迫ってきて、息苦しさを感じる。

晶哉は、みんなで落ち着かせとるうちに泣き疲れたんか寝てもうた。