短！まちがいさがし【不死川実弥】

. ページ42

.



『…もしかして、冨岡先生変な伝え方しました…？』


「はぁ？……お前事故ったんじゃねぇのかァ？」


『ああ…、やっぱり。ただの捻挫です、コケちゃって。そのまま隣に停まってた営業車に顔ぶつけちゃって…』


(…コケた？ぶつかった？……いや、確かにぶつけたっつってたな…)


「……マジかよ…、クソ冨岡の野郎。」






掴んでいる細い肩から温かい体温が伝わってくる。

困ったように笑うコイツに張り詰めていた気が抜けてその場に蹲み込んだ。いや、良かった。先程まで脳裏を駆け巡っていた最悪の想像通りにならなくて。






『ふふ、…って笑っちゃダメですね。ごめんなさい、心配かけて。』


「…ああ、電話も繋がんねぇし。俺がどんな思いで」


『大丈夫ですよ、ちゃんと生きてますから。一緒に帰りましょう…？』






ふわりと抱き締められた体。

細い腕が背中へ回された。Aの細い髪が耳を掠めて擽ったい。スマホ充電切れちゃって、なんて囁かれた謝罪もいつもと同じ、安心する声だ。思わず目頭が熱くなったのは冨岡…いや、この人騒がせな嫁のせいだろう。







………







…






.





『え？！冨岡さんそんな伝え方したんですか？！…ありゃー…、』


「あんな言い方されりゃあ、コケたとこを轢かれたって考えるだろォ…。…マジで肝が冷えたわ。」


『間違ってる訳じゃないけどなんだろう…、言葉足らずなんですね…？』


「はぁ、…で、その専務はどこだァ…。二度と缶コーヒーなんて買ぇねぇ体に」


『やめて下さい！一応上司なんですから…！！』



.

本当の干物→←.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す