ハイスペック・バカップル 6 【荒北靖友/洋南大学】

31 ページ31

.


　バニラソフトを買って、みんなが集まってるパラソルの下に戻った。
　そういえば前回も似たような流れでバニラソフトを買ったかもしれない。
『溶ける前に食べろ』と靖友くんと神風さんに真剣な顔して言われたからだ。これにはどこか聞き覚えがある。
　もうハッキリとは覚えていないけど、前回はきっとコーンだったんだろう。
　今回は溶けそうだからとプラスチックのカップに入れてもらった。だからのんびり食べることにした。

「今回は荒北の絶叫を聞かなくて済みそうだな」

「あはは、寿一も思い出したのか？」

「私なにか、やらかしましたっけ？」

「んー。これ俺らが教えていいのか分からないから、秘密で」

　教えて貰えなかった過去の私の失態は気になるけれど、覚えていないんだから仕方がない。
　だらだらとカップにバニラソフトが溶けて溜まっていく中、留守番係を交代したのか靖友くんがギャンギャンと吠えながら福富さん達と海に向かっていく。
　留守番係を引き受けたのは、金城さんと闘犬のようだ。

「でろっでろに溶けとらんか、それ」

「変身しただけだよ」

「暑いからな、仕方ない」

　ふと覗き込んだ靖友くんの刻んだ勝敗結果は、金城さんだけが正の字に一本足りていなかった。
　代わりに、福富さんが一本多い。
　距離がどのくらいなのかは分からないけど、随分泳いだな、と思わざるを得なかった。

「しっかし、あんなに『はよ食え』言われとったんに……結局溶かしとるんじゃの」

「随分と二人は必死だったが、前回なにかあったのか？ 福富も新開も教えてくれなくてな」

「それが覚えてないというか、なんかやったっけ、みたいな……。――あ、良い風！」

　海の匂いを引き連れ、涼しめの風が吹き抜ける。
　髪の毛がなびく程のそれを満喫していたので、軽くなったカップが浮いても咄嗟に反応出来なかった。

32→←30

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す