20 ES編 ページ20
「桃ちゃん」
「――ッ!? あ、Aちゃん……。良かった、いや怪我してるから良くないけど、なんだろ。目を覚まして、良かった、かな……? あはは、なんて言っていいのか分かんないや」
泣きそうな顔で出来るだけ明るく振る舞う桃ちゃんに、やんわりと尋ねます。
「私は元気にこうしてお話が出来ます。ちょっと頭は痛いですが、骨にも異常はないそうです。でも、そんなことより私は今、重大なことに怯えているのです。聞いて頂けますか?」
きょとん、とした目を向けた桃ちゃんに、現状一番かもしれない悩みを打ち明けました。
「これからお会計なのですが、見ての通りです。私の荷物は一切手元にありません。ですから、このままだと私は病院から出ることが出来ないのです……!」
「――あっ、そっか。コレ渡さないと……ふふ、あはは、なんだろ、いつも通りのAちゃんだ!」
やっといつもの顔で笑ってくれました。
桃ちゃんが持っていたのはやはり私の鞄で、中からお財布を取り出してお会計を済ませました。
制服も桃ちゃんが持っていてくれたようで、ちょっとだけお世話になった病室で着替えを済ませ、看護師さんに尋ねてお答え頂いた通りにしてから、桃ちゃんと一緒に病院を出ました。
「Aちゃん。お財布なしだったのに、どうしてお水持ってるの?」
「あ、これですか。これはですね――寝ている間に喉が乾いてしまって、偶然私のかすれた声を聞いた紳士なお兄さんが、そっと差し出してくれたのですよ」
「おぉ、病院内までも出会いの場に――って、Aちゃんには松岡さんがいたね。失礼しましたぁ」
嘘は言っておりません。だから許してくださいね。
結構遠い病院にきていたようです。タクシーチケットというものを預かってきたからという桃ちゃんの先導で、タクシーに乗り込んで移動しました。
車内の会話は、もちろん私の怪我のことです。
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bianca(プロフ) - コスミ@終わらない夏さん» やはりそうでしたか!お返事ありがとうございました。 (2014年11月15日 11時) (レス) id: 59896345eb (このIDを非表示/違反報告)
コスミ@終わらない夏(プロフ) - biancaさん» そうですね、クロスオーバーさせております。別作品で箱根の狼さんを書き始める前に、相互ネタ仕込みしたかったので。 (2014年11月13日 16時) (レス) id: a3fcdb67fd (このIDを非表示/違反報告)
bianca(プロフ) - 32にでているあらきたさんとは弱虫ペダルの荒北さんでしょうか??夢のコラボ!ですね@ 'ェ' @ (2014年11月13日 0時) (レス) id: 59896345eb (このIDを非表示/違反報告)
Alice(プロフ) - コスミ@終わらない夏さん» 軽音だったんですか!羨ましいです〜(≧◇≦) このクオリティで没案…だと…!? すごく凛ちゃんだなぁと思って浸りながら読みました(*ノωノ) モモくんのクワガタへの愛がすごいですよねw 愛しの相手にはぴゅんすけをプレゼント!!ですからねww (2014年9月22日 16時) (レス) id: be52c26f88 (このIDを非表示/違反報告)
コスミ@終わらない夏(プロフ) - さくら大好きさん» 妹(姉)がいる設定は公式であるのに、まったく影が見えないのですが多分姉大好きっ子だと思うんですよね……。凛ちゃんが二期からめっきりツッコミ係のギャグ要員化しているので、そこを活かせればなぁなんて思っております。応援ありがとうございます! (2014年9月22日 10時) (レス) id: a3fcdb67fd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:コスミ | 作成日時:2014年9月12日 14時