19 ES編 ページ19
.
少しするとコンコンとノックがあったので、内側からドアを開けました。
ちょっとだけ痛む首元を動かさないと目が合わせられない山崎さんが、そこに立っておられました。
スッ、と私と山崎さんの視線の間に、ミネラルウォーターのペットボトルが現れました。
「口止め料」
「いいのですか? ありがとうございます。喉、乾いていて……」
「だと思った。ソレ、悪化させんなよ。じゃあな」
「あ、待ってくださ、げほっ!」
「――俺は今日ここでアンタと会わなかった。やけに喉乾いてそうな声で喋る女を見掛けたから、紳士ぶって飲み物をくれてやった。ただそれだけ。分かったな? ――白波の生徒、この階の待合室に一人きてたぞ」
その生徒の特長を告げ、山崎さんは私に『言うなよ』と念を押してから去っていかれました。
間違いなく桃ちゃんです。会いに行きたいのは山々ですが、ここにいろと言われた身です。
「まずは、飲み物を飲んで落ちつきましょう」
あぁ、本当です。山崎さんの言うとおり、なんだか喉がカラカラします。
最初に自分の声を聞いたときはそうでもなかったのに、慣れない場所で緊張したのでしょうか。
少しすると結果が出たようで、骨や脳には異常はないようです。ただ、結構腫れと痛みが続くかもなんて言われてしまいました。支払いの際にお薬受け取ってくださいね、と。
支払いもなにも、病室には私の荷物が一切ありませんでした。お財布も保険証もありません。
どうしたら、どうしたら――と思いながらも入院患者さんのような格好で、待合室にいるはずの桃ちゃんを探します。――いました。指定の鞄を二つ抱えているので、きっと片方は私のでしょう。
ずっとうつむいているその真横に立っても、桃ちゃんが私に気付いてくれません。
276人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
bianca(プロフ) - コスミ@終わらない夏さん» やはりそうでしたか!お返事ありがとうございました。 (2014年11月15日 11時) (レス) id: 59896345eb (このIDを非表示/違反報告)
コスミ@終わらない夏(プロフ) - biancaさん» そうですね、クロスオーバーさせております。別作品で箱根の狼さんを書き始める前に、相互ネタ仕込みしたかったので。 (2014年11月13日 16時) (レス) id: a3fcdb67fd (このIDを非表示/違反報告)
bianca(プロフ) - 32にでているあらきたさんとは弱虫ペダルの荒北さんでしょうか??夢のコラボ!ですね@ 'ェ' @ (2014年11月13日 0時) (レス) id: 59896345eb (このIDを非表示/違反報告)
Alice(プロフ) - コスミ@終わらない夏さん» 軽音だったんですか!羨ましいです〜(≧◇≦) このクオリティで没案…だと…!? すごく凛ちゃんだなぁと思って浸りながら読みました(*ノωノ) モモくんのクワガタへの愛がすごいですよねw 愛しの相手にはぴゅんすけをプレゼント!!ですからねww (2014年9月22日 16時) (レス) id: be52c26f88 (このIDを非表示/違反報告)
コスミ@終わらない夏(プロフ) - さくら大好きさん» 妹(姉)がいる設定は公式であるのに、まったく影が見えないのですが多分姉大好きっ子だと思うんですよね……。凛ちゃんが二期からめっきりツッコミ係のギャグ要員化しているので、そこを活かせればなぁなんて思っております。応援ありがとうございます! (2014年9月22日 10時) (レス) id: a3fcdb67fd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:コスミ | 作成日時:2014年9月12日 14時