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河村については、わからないことが多い。
家の場所はわかるけれど、入ったことはないし
SNSもめったに更新しないから、
普段何をしているのかでさえ定かでない。
連絡だって割と遅い方だし、
いつだって自分のことを話したがらない。
「はあ」
オフィスに一人、福良がいた。
今日は誰も来ない予定なので、
少しでも仕事を片づけるために来た。
しかし、最近の河村は不思議だ。
以前も不思議なところは多くあったが、
最近はもっと増えた。
ソファで寝ていると思ったら、
目を開けて考え事をしているだけだったり、
いくら呼びかけても微動だにしなかったり...。
いずれにしても、何か考え事をしていることは
間違いないだろう。
しかし、一体、俺が何の役に立つ?
「はあ、悔しいなあ」
彼の独り言は、薄暗い部屋に虚しく放たれた。
『おっと、ここで押した!!速い、速すぎる!東大卒の最強クイズ王、答えを、どうぞ』
『マラーのタヒ』
ピンポンピンポン!!
某大人気クイズ番組が目に入る。
それにしても活躍しているなあ。
『伊沢、解説を』
『はい。この絵はですね、フランス革命を描いた絵画のひとつで、シャルロット・コルデーという暗殺の天使と呼ばれた女性に暗殺されたジャーナリストの絵です』
パチパチパチ。
「かっけぇー」と須貝。
「やばすぎ」とこうちゃん。
さきほどから淡白な感想をしつつも、
番組に見入っている二人。
その横で静かに眠っている本人。
そして、それを見ている僕。
伊沢さんは暗殺されないよ。
ちゃんと僕が、綺麗な病タヒを作ってあげよう。
「あ、河村寝ちゃった」
考え事のために目を瞑っていた河村は、
気付けば伊沢の横で船を漕いでいた。
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作者名:yoyo | 作成日時:2020年1月19日 13時