華の道化師【QK】 (ページ12)

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部屋の真ん中に、腰ほどの高さの小さな木のテーブルがあって、そこに硝子の細い花瓶が乗っかっていて、一輪の薔薇が生けられている。

美しさについては言葉にするまでもなく、薔薇という花の本来持ちうる魅力を放っていた。

あの後、三人はどこかへ移動することにした。

医者の話によると、伊沢は目を覚ましているが、ひとりにさせてやってくれ、とのことだった。

三人はとりあえず安堵することにした。

そして、福良の提案により河村の自宅へ向かうことに。

オフィスに行くには、気が重いのだ。

福良と山本は、河村の部屋がどうなっているのか、何が置かれているのかなど一切想像がつかなかったので、部屋に入った途端、言葉を失った。

「なにこれ......すごい綺麗」

彼の部屋はとても整理整頓がなされていて、掃除も行き届いているようだった。

しかし何よりも目を引いたのは、カラフルな色のついた花瓶の数々。

部屋の隅の棚に並べられているのが見えたのだが、その数は数十本分だろうと予測できた。

そして、その花瓶はどれも空で、何も入っていなかった。

まるで、たくさんの花をいっきに処分してしまったかのように見えた。花はあったのだろうか。

「まあ、その辺にどうぞ」

河村は二人をソファに座るよう促して、自分もその近くの椅子に座った。

「僕のことなんだけど、驚かないできいてほしい」

彼は唐突に話し出した。

「わかった」

「はい。なんですか？」

二人は顎を引き、きっと今から重大な話がされるのだろうと緊張した。

「この事はずっと黙っていた。伊沢にだけはこの間言ったんだけどね。本当は言いたくないんだ」

一呼吸置いて、河村は自分が【華の道化師】であること、そして伊沢のﾀﾋを予知していたこと、それからそれを黙っていたことを謝罪した。

「えっと、ちょっと話が複雑すぎて......」

二人は状況を受け入れられない様子だったが、しばらくの沈黙の中で、必死に河村の言葉を反芻し、理解した。