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河村side
僕には幼なじみが居る。
一概に幼なじみと言っても世の中色んな関係があるだろうが、僕達の場合はほとんど兄妹、と言ったところだろうか。
何か身の回りに変化が起きた時には、とりあえず報告する。
悩み事がある時には、相談する。
特に用があるわけでもないけれど、ふとした時に気になって連絡する。
ある意味両親と友人の良いとこ取りのような、そんな関係だ。
｢そんじゃお疲れ様ー｣
｢お疲れ様でしたー！｣
なんて口々に似たような挨拶が飛び交う中、ふと携帯の通知を見ると、その幼なじみの彼女の名前があった。
ロックを解除しその内容に目を通す。
｢…え？｣
｢ん、なんかあった？｣
と、思わず声を漏らした僕に反応して伊沢が声をかけてくる。
｢いやぁ、ちょっと予想外の事が起きたから驚いて。｣
｢どういう事？｣
怪訝そうな顔でこちらを見る彼に、思わず笑みがこぼれる。
｢うちの幼なじみがね、QuizKnockの記事に出るみたい。｣
｢え？幼なじみってあの藝大通ってるって子？｣
と、いつの間にか話に加わってきたのは福良。
｢そうそう。いやぁ、世の中不思議な事が起こるもんだね。｣
なんて思わぬ巡り合わせに感心していたら、
｢え、なんでその子がうちの記事に出るって話になってんの？｣
と、伊沢が内容を掘り下げてきた。
｢どうやら先輩にQuizKnockのライターがいるらしくてね。手伝うんだってさ。｣
｢あぁ、あの子か！へぇ、そこと繋がるんだね。｣
納得した様子で頷く福良に対して、まだ伊沢は気になる事があるようで。
｢え、それ河村さんの幼なじみって知ってて声掛けたってこと？｣
｢いや、そういう訳じゃないと思うよ。僕も今連絡が来てただけだから詳しいことは分からないけれど、周りにQuizKnockとか僕の話はしてないって言ってたから。｣
Aはこういう所がなかなか律儀だ。
別に彼女がそういう事を自慢するタイプではない事は知っているし、僕もあまり言いふらされたい訳では無いのは確かだが、それ以上に僕はAの事を信頼している。
だから、彼女が話しても良いと判断したなら僕はそれで構わないのだけれど。
彼女も彼女で色々あるのだろう。
｢まぁ、この件は後で本人にゆっくり聞くとするよ。それじゃあ、お先に。｣
そう言ってオフィスを後にした僕は、Aに電話をかけた。
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作者名：きゃる | 作成日時：2021年9月10日 10時
