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Your side
あの後、先に軽く内容を説明しておきたい、という先輩の言葉で、近くにあったカフェに入った。
どうやら聴音に関する記事を書くらしく、それが比較的得意である私に話が回ってきたようだ。
一通りの説明が終わり、少し薄くなったアイスコーヒーを飲む。
「何か質問とかある?」
『いえ、特には。…あ、でも、』
「ん?」
『いや、単純に、どうして私やったんですか?聴音なんて基本みんな出来ることなのに。』
そう。別に先輩と私は、特別仲が良い訳ではなかった。
たまにインスタのDMが来たり、偶然会ったら少し世間話をしたりする事もあったが、せいぜいその程度だ。
だから、音楽科ならみんなある程度はできるであろう事を、わざわざ後輩の私に頼んでくることが、少し気になった。
「あー、まぁ、そうなんだけど、やっぱりAちゃんが耳が良いっていうのは門下内でも有名な話だったし、それに…」
と、意味深に言葉を切った先輩に、何となく背筋を伸ばす。
「なんか、QuizKnockメンバーっぽいなって思ったの。」
『…というと?』
「んー、なんて言うのかなぁ。ほら、Aちゃん、雑学とか詳しかったりするでしょ?それに勉強もできるし。」
『いや、勉強は…。でもまあ確かに、雑学系は好きですね。』
幼なじみの影響か、クイズ系YouTuberの動画を見たり、色んなクイ研やクイズサークルが公開しているペーパーを解くことを趣味としている私は、きっと相当な知識がついている。
勉強に関しては、まあ、高校から音楽科という時点でそこまで出来る訳では無いのは察せると思うが、一応自分なりにきちんとやっていたし、なんなら中学は受験して、そこそこの学校に通っていた。
「でしょ?なんかそういう、インテリオーラがにじみ出てる感じ?それでいて別に周りを見下さない感じ?みたいなのが、なんかぽいなぁって思って!」
『なるほど…?』
何だか満足気な先輩の笑顔を見ながら、もうほとんど氷が溶けて水っぽくなってしまったアイスコーヒーの残骸を飲み干した。
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作者名:きゃる | 作成日時:2021年9月10日 10時