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河村side
今日は長い1日だった。
Aとの撮影だって、いくら彼女が教えるのが上手いと言ったって単純に2時間で藝大入試に出る内容を全部やるっていうのは正直頭がどうかしている。
だけど、飲み会はやっぱり参加して正解だった。
まさかAがあそこまで全部話すとは正直思っていなかったけれど、あの流れなら確かに効果的な手だったかもしれない。
ただ、伊沢と福良はやっぱり少し疑問に思っただろうなぁ。
この件に関しては少し僕の方から補足しておこうか、なんて思いながら水を飲み、ふとスマホを見ると見慣れた通知が。
まぁ、そんな予感はしていたさ。
いつものようにトークを開き、そのまま彼女に電話をかける。
『たぁ兄ぃ〜…』
「なぁに今度は。」
『さっきの話さ、お父さんとお母さんになんて説明すれば良いと思う?』
やっぱりそこだよなぁ。
彼女はまだ耳のことを親に話せていない。
今までは、あれだけ期待されてたら言いにくいよな、と同情し、別に無理して今すぐ言わなくてもいいんじゃない?というスタンスでいたが、QuizKnockで働く、しかもそれが動画メインともなればそうもいかないだろう。
「そうねぇ。でも正直君のご両親なら反対もしないだろうし、耳のことだってちゃんと受け入れてくれると思うんだけど。」
『逆にそれが辛い。』
「…なるほど。」
なんとなく、彼女の気持ちは理解した。
「難しいねぇ。」
さて、どうしたものか。
僕としても、彼女と彼女の両親のどちらも心のダメージが1番少ない形でこの件を解決したい。
「一つ提案として、僕も説明の場に立ち会って一緒に話すっていうのはあると思うよ。」
なんならQuizKnockの説明は僕からの方が良いと思うし、と付け足せば、
『それは正直めちゃくちゃありがたい。その方向でお願いしたい。』
と、彼女も賛成してくれた。
「ならそろそろ夏休みだし、帰省がてらその話が出来る様にすれば丁度良いのでは?」
『あー、もうホンマにありがとう。神。今度スケジュール調整しよ。』
「ん、了解。じゃあそろそろおやすみ。」
『はいー。』
と、通話が終了した。
さて、僕の方でも少し作戦を練ろうか。
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作者名:きゃる | 作成日時:2021年9月10日 10時