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Your side
『うわぁ、初めて早押し機持ちました。』
「え、マジ?ホントにやった事ないんだね。」
「なんか適当なベタ問10問ぐらいフリバする感じで良い?」
「おっけー。Aちゃん話通じた?」
『はい!大丈夫です。』
「通じるんだ。」
と、笑う福良さんに少し緊張がほぐれる。
ベタ問とはクイズでよく出る問題、つまりベタな問題のことだ。
フリバとはフリーバッティングの略で、クイズの場合は余った問題などを特に詳しいルールを設けずに消化する事を指す。
初心者とはいえ、私もクイズオタクの端くれだ。
あの伊沢拓司と早押し対決ができるなんて、正直嬉しくて仕方がない。
「それでは即席早押し大会。正解はプラス1点、誤答は各自反省して下さい。それでは、問題。」
「ベートーヴェンの3大ピア/」
思い切ってボタンを押す。
と、手元のランプに解答権を示す明かりが着く。
周りからの視線を感じる。
うぅ、怖。
『…熱情?』
恐る恐る答えると、正解の音が鳴る。
『良かったぁ!』
「え、すげえ普通に強ぇ!」
おぉ、とその場にいた関係者の方達からも歓声が上がり、伊沢さんも褒めてくれる。嬉しい。
「ちなみにどんな問題か分かった?」
『え、ベートーヴェンの3大ピアノソナタと言えば、ってやつですよね?作品番号順に聞かれるかなって思って熱情にしてみたんだけど。』
ベートーヴェンの3大ピアノソナタというのは、8番の悲愴と14番の月光、そして23番の熱情の事だ。
こういう系の問題は最後が聞かれるかな、と思って押してみたら、読み通りだった。
「うん、そういう事。」
『河村さんの事だから初手はピアノ関連の問題出してくれるかなって張ってた所はあるけど、取れてよかったです。』
と、素直に感想を述べれば、確かになぁ、と伊沢さんが大袈裟に悔しがっていた。
「よし、じゃあ次4分33秒張っとこ。」
「フフ、なら出すのやめよ。」
「うわぁ、言わなきゃ良かった!」
なんて言いつつ、最終結果は3対7で伊沢さんの勝ち。
正直3点も取れたのは奇跡に近い気がする。
本当に貴重な経験をさせてもらったな、なんて思いながら早押し機を返した。
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作者名:きゃる | 作成日時:2021年9月10日 10時