君と溺れまわる 【bl】

渦巻いた純愛 kwmr×sgi ページ31

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僕の恋人は今日、なんだかやたらにトロンとしている。

というのも、二人で映画を観に来たのだが、上映中に彼の手が僕に触れた時、異常な冷たさを感じた。

単なる冷え性かと思ったのだが、映画館を出てからも恋人の様子はおかしい。

帰りの電車、車内は混んでおらず、僕らは二人で隅の方に座ったのだが、電車が動き出した途端、恋人は眠りこけた。

寝顔を見てみると、なかなか険しい表情をしているではないか。

ツンツン、と恋人の服をつつく。

「...ん、何？」

「大丈夫？体調悪そう」

恋人は一瞬目を見開いたが、すぐにいつもの爽やかな顔で微笑し、「眠いだけよ」と言うのだ。

「そう。心配させるな」と毒づいてはいるが、内心、僕は彼が嘘をついていることを知っている。

恋人の家に着くと、夕食の準備をする為キッチンへ向かう。

食器を出していると、何やら恋人がのそのそと近付いてくる。

「...ね、河村」

見上げると、恋人は先程より赤らんだ顔で立っていた。

「ちょっと、部屋にいるわ」

言うなり、恋人はふらふらと頼りなくよろめいた。

「何が眠いだけなんだよ、まったく」

僕は恋人を支え、寝室へと連れて行った。

「いやー、ごめん」

ベッドの上に腰掛け、両手の平を合わせ、上目遣いに恋人が言う。

「今日、せっかく会える日だったから、無駄な心配かけたくなくてさ」

少しバツが悪そうに言った。

「ふーん。早かれ遅かれこうなってたでしょ」

「...うん、それは、ごめんな」

僕はふいに恋人をいじめてやりたい衝動に駆られた。

いつもは僕を見下ろす身長で、僕より年上である立ち位置だから、逆転してみるのも悪くない。

「散々大丈夫かって訊いたじゃん」

「うん、ごめん」

「......誘ってる？」

「へ？」

僕は恋人の開かれた目を見つめながら、その身体を押し倒した。

「こんなに僕を掻き乱して。タダで済むと思う？」

自分のかけていた眼鏡を外し、ベッド脇のテーブルにコトりと置く。

恋人の赤らんだ頬に手を添えれば、目を逸らされてしまう。

「......駿貴」

普段は呼ばない名前を呼ぶ。

瞳が揺れ、恋人の手が僕の手に触れた。

「......もういいでしょう？」

これ以上言葉を発するのは野暮だ、と感じられた。

僕は恋人の熱を帯びた頬にそっと口付けし、

「無理をしたバツだ」と言わんばかりに、恋人の身体を愛でた。

そして恋人はいつもみたいに破顔して、恥ずかしそうに愛の言葉を吐いた。

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