波紋で揺蕩う izw×kwkm ページ28
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冬の、午後の空気が好きだ。
今日のように晴れている日は特に。
橙色の陽がカーテンから差して、部屋の机、椅子、床を照らしている。
何も考えていないとつい夢の中へ誘われてしまいそうな瞬間。
恋人は文字通り陽に照らされながら、椅子で舟を漕いでいる。
オフィスに響くのは時計の針の音だけ。
まるで夢、いや幻にいるかのような気分に陥る。
「起きろー」
なんとなく声を上げてみれば、つい今の今まで舟を漕いでいた恋人がハッとして顔を上げた。
「あー、寝てた」
んー、と声ともつかない声を上げながら背伸びをする。
そして俺の視線を捉えて、「あ、すみません」と、言葉に反して悪びれた様子もなく微笑した。
「仕事しろー」
と俺は返す。
もしくは。
もしくは仕事などこの場においてさほど重要ではない。
悠揚とした空気に身を任せ、俺は手に持っていた文庫本を机に置く。
そして、やや乱れた恋人の赤銅色の髪に触れる。
そのまま手は頬を伝い、顎の下まで到達する。
恋人はぼんやりと俺を見つめていたが、やがてゆっくりと目を閉じた。
唇がそっと、恋人の唇に触れる。
それすらも作り物ではないかと思うほど俺は夢心地であった。
あるいは、恋人もそうだったかもしれない。
「俺らさ、このままどこに行くのかな」
気付けばごく自然に俺の口から、そんな言葉が発せられていた。
「......わかりません。でも今は」
恋人のいつもより落ち着いた声が耳元でする。
「今は、こうしていたいです」
と言って、俺を抱き締めた。
「......ねえ、これって夢?」
「冗談キツイですよ、リアルです」
今、互いの顔は目と鼻の先にある。
恋人の花笑みが俺の目に映る。
ああ、ずっとこうしていられたら。
「好きだよ」
俺の、恋人を抱き締める力が強くなる。
「知ってます」
と恋人は青眼の目つきで俺を見て言った。
絵空事みたいな物語を神様は用意しない。
ただそこにあるのは現実のみだが、時にそれは思い描いた空中楼閣よりも淡く、切なく、美しいのだと知った。
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ゆーり。(プロフ) - wtnbさん受け美味しかったですありがとうございます( ˇωˇ )kwkm×wtnbのお話ってできますかね、、、?できるのなら、お願いします!リクエスト&コメント失礼しました! (2020年2月26日 19時) (レス) id: 46907796aa (このIDを非表示/違反報告)
yoyo(プロフ) - 緑茶さん» リクエストありがとうございます!はい、書かせて頂きます。 (2020年2月16日 15時) (レス) id: 482fadba84 (このIDを非表示/違反報告)
緑茶 - コメント失礼します!リクエストなんですが、編集長×神ってお願いできますかね?シチュはなんでも大丈夫です。 (2020年2月16日 14時) (レス) id: b20aeec65c (このIDを非表示/違反報告)
yoyo(プロフ) - 紫陽花さん» ありがとうございます!作ってみますねー!気長にお待ちください (2020年2月14日 5時) (レス) id: 482fadba84 (このIDを非表示/違反報告)
紫陽花 - コメント失礼いたします。いつも拝見しています。リクエストでkwmrさん×sgiさんのお話がみたいです (2020年2月13日 21時) (レス) id: 9e4397637e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:yoyo | 作成日時:2020年1月24日 0時