波音に似た人 kwmr×izw ページ25
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僕の恋人は波音に似ている。
どういうことか。
『ぁ、河村さん?うっ、ちょっと来てください』
涙声で訴える恋人の電話を受けたのは数分前のこと。
時計の針は夜の12時を回っている。
『なに?何をしてそうなった?』
相手の状況がわからず僕は混乱した。
『家で、ホラー映画を観てたんですよ』
そうしたら怖くてその後もソファから一歩も動けないと言うのだ。
『はー、ビビりなのにどうして観たんだよ』
と質問すると、やや少しの間の後に、僕の知らないくらい女々しい声で彼は言った。
『だって、河村さんが、前、オススメして......』
段々と語尾が小さくなっていき、声は途絶えた。
そのとき、僕の胸はドクんと鼓動を増して、今にも溢れ出しそうな愛しさで満たされた。
僕が随分前に薦めたホラー映画を、彼が借りてきてひとりで観ようとした、なんて。
『可哀想。でもかわいい』
『もー、なんて言いました?それどころじゃなくて』
彼はまだ風呂にも入っていないとのこと。
そんなふうにビビりで弱気な恋人は珍しく、とてもいじってやりたい気分に見舞われた。
『まあ、今から行ってあげよう』
『まじですか!助かります!』
恋人のやや期待の混じった明るい声を後に、僕は家を出て彼の家へ。
十数分後。
ドアは開けてあるとのことだったので、僕は遠慮なく、入り慣れた恋人の家に侵入。
「おーい。ビビりな伊沢さん」
そう叫びながら彼のいると思われるリビングの扉を開ける。
するとソファで横になって眠っている恋人がいた。
「はぁ、やれやれ。せっかく来たのに」
僕は、そっと彼の身体に毛布を掛けた。
それから僕の手は自分で思うより自然に恋人の、髪の毛へと伸びている。
そっと髪の繊維を撫で、ふわふわとした感触に愛おしさを覚える。
「ん.....あ、河村さん!来てくれたん、です、ね」
本当に眠そうにそう言ったものだから、
「もう寝なよ。僕が運んでやろうか?」
と言えば、そこだけは何故か強気で、
「だ、大丈夫です!自分で布団行きます」
と返してよろよろと立ち上がった。
「僕、今日は何もしないよ」
思わずそんなことを言っていたが、恋人は僕の顔を見て訝しげに眉をひそめ、
「怪しい。河村さんはソファ」
「え、無理」
「はぁー、まあいいや。隣で」
そうそう。その言葉を期待していたのだ。
「頬が緩んでます。じゃ、先に寝ますね」
寝室へと遠ざかっていく恋人の後ろ姿を、僕はただ愛おしく見つめた。
回遊した無垢 ymmt×sgi [R]→←眩み愛と沈む fkr×kwmr
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ゆーり。(プロフ) - wtnbさん受け美味しかったですありがとうございます( ˇωˇ )kwkm×wtnbのお話ってできますかね、、、?できるのなら、お願いします!リクエスト&コメント失礼しました! (2020年2月26日 19時) (レス) id: 46907796aa (このIDを非表示/違反報告)
yoyo(プロフ) - 緑茶さん» リクエストありがとうございます!はい、書かせて頂きます。 (2020年2月16日 15時) (レス) id: 482fadba84 (このIDを非表示/違反報告)
緑茶 - コメント失礼します!リクエストなんですが、編集長×神ってお願いできますかね?シチュはなんでも大丈夫です。 (2020年2月16日 14時) (レス) id: b20aeec65c (このIDを非表示/違反報告)
yoyo(プロフ) - 紫陽花さん» ありがとうございます!作ってみますねー!気長にお待ちください (2020年2月14日 5時) (レス) id: 482fadba84 (このIDを非表示/違反報告)
紫陽花 - コメント失礼いたします。いつも拝見しています。リクエストでkwmrさん×sgiさんのお話がみたいです (2020年2月13日 21時) (レス) id: 9e4397637e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:yoyo | 作成日時:2020年1月24日 0時