follow my hand (ページ25)

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『follow my hand』ymmt ページ25

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先輩の紹介で運良く入ったこのクイズノックという会社は、学生バイトとしての身分だけれど、とてもホワイトで居心地が良い。

若い会社だということもあるかもしれないが、皆が意欲に溢れていて、並々ならぬ努力の末に多くの経験と知識を得たようなメンバーが、個人としてもチームとしても創意工夫をしながら前に進み続けている。

そんな人たちや場所に囲まれて仕事が出来るという滅多にないチャンスに。

私は少しだけ、浮かれていたのかもしれない。

事の始まりは、担当する記事の校閲のためにたまたまオフィスに寄った時のこと。

普段はメールや電話のやりとりで済ませてしまえることなのだが、副編集長の山森さんに、もし時間があれば寄って欲しいと言われており、何事かと思いながら大学終わりに足を運んだ。

「あ、Aちゃんおつかれ！やっときてくれた！もー待ってたんだから！！」

まだ真新しいオフィスに初めて足を踏み入れて数分。

その大きさに若干気圧されながら挨拶だけを済ませた私の元へ、山森さんが小走りで近づいてくるのが見えた。

「ね、スーパーヒーロー戦記の映画、いつ見に行く？！」

山森さんと私は、編集長とライターという関係でもあり、数少ない特撮オタク友だちでもある。

まさか開口一番そんな話をされると思っていなかったので、その勢いに呆気にとられてしまった。

『えぇ？！それで呼んだんですか？！そもそも私でなくても渡辺さんと一緒に行けばいいんじゃ…』

「こうちゃんとはまた見てる視点が違うんだよ！Aちゃんとだからこそガールズトークで盛り上がれるんじゃない！」

分かってないなぁと言いながら携帯を取り出してスケジュールアプリを立ち上げる山森さんは、もうこの時点で見に行く日程を決めるつもりなのだと察知する。

「ちょっともー山森さん、Aちゃん困ってるじゃん。まだカバンも置いてないんだから、ちょっと落ち着いて話したら？」

押され気味の私を見るに見かねたのか、苦笑しながら助け舟を出してくれたのは、山森さんと同じくクイズノック古参の山本さんだった。

「先輩だからって遠慮しなくていいんだよ、仕事の話でもなさそうだし」

と、優しくフォローしながら肩に手を置いて、ね？と可愛らしく小首をかしげられれば、誰だってその姿にドキッとしてしまって当然だと思う。

高鳴る心臓を悟られないように、私は曖昧に笑顔を返すしか無くて。

そんな自分にもまた、落胆してしまうのだった。

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