follow my hand (ページ16)

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あの日のあの言葉をきっかけに、渡辺さんは何かと私のことを気にかけてくれているようで。

「Aちゃんおつかれ！お、頑張ってんじゃん！」

「今日は何の作業してんの？」

「無理してない？大丈夫？！」

と、たまたまデスクの近くを通りかかったり、休憩しているときに声をかけてもらえるようになった。

その事がとても嬉しいと思っていた反面、声をかけられるタイミングがいつも突然なことが多く、その度に驚いてあられもない声をあげてしまう私はいつしか、渡辺さんはそれを楽しんでいるのではとも思うようになった頃。

その日は、突然にやってきた。

高松さんに撮影部屋に呼ばれ、何事かと思って神妙にしていると、こっそりと何かを企むような顔であることを提案された。

「そろそろ、１人で撮影のADやってみる？」

『え…えぇ？！わ、私が…１人で、ですか？！』

それまでは大先輩ADの高松さんのサブのような形でその仕事を学びながら企画や撮影に参加していたので、まさかそんな急に１人で立たなければならない場に直面する日が来るとは思っていなかった。

「結構気合入れて仕事覚えて、最近は率先して動いてくれてるようになったしさ。そろそろ１人でも良いんじゃないかって、この間会議でみんなと話してたんだよ」

『そ…んな、私…まだ、何も…』

「そりゃまだ入って数ヶ月だし不安なことも多いとは思うよ。でも、クイズノックのチャンネル数も増えて、新しい事務所になれば撮影場所も増える、そうなると今のAD数だと正直回らなくなりそうなんだよ。だから、とにかく、やってみてくれないかな。俺も太鼓判押すから」

先輩の高松さんにそこまで言われてしまったら、でも、だって、と不安でごねたくなる気持ちを飲み込んで。

『わかりました…。私なんてまだまだだですけど、でも、やれるだけ頑張ります！』

と、虚勢でも胸を張って挑まなければという気持ちになった。

よし、じゃあよろしく頼んだ！！と高松さんに須貝さんばりのサムズアップをされ、撮影部屋を後にすると。

待ち構えていたように廊下に立ちふさがっていたある人物と遭遇して目を丸くしてしまった。

『渡辺さん…？どうしたんですか？』

「話は聞かせてもらったぜ」

『え？』

「いや、え？じゃなくて！！え、今高松と１人でADしてみないかって話してたんじゃないの？！」

『な、なんで知ってるんですか？！』

「ふっふっふ、先輩は何でも知っているのだよ」

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