『follow my hand』wtnb ページ15
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この４月から、私はクイズノック に入社した。
いわゆる社会人１年目の新人だ。
ここにはたくさんの人がいて、ライターさんだったり編集者さんだったりが日々忙しく仕事をしている。
そんな中、私の仕事はというと。
「え？！うっそ、これ手書き？！」
『えっ！？』
背後からの突然の大声に、机にかじりついていた身体が跳ね上がった。
驚きのあまり、持っていた油性ペンが思わず手から離れ床に落ちてしまったのを、慌ててその人が拾い上げてくれた。
「ご、ごめん。驚かせちゃって…」
『い、いえ！私もすみません、ちょっと、集中しすぎてしまって…」
ペンを受け取って顔を上げると、神妙な顔をしている渡辺さんと目が合ってドキっとする。
「ってかそれちょっと見せてもらっていい？」
『え？あ、全然、その、ど、どうぞ』
YouTubeの出演者でありライターの渡辺さんとは、まだまだ関わりも少なくて、そんな人に話しかけられていることに緊張が隠せず言葉が上手く出てこない。
書いていたスケッチブックを躊躇いながら手渡すと、渡辺さんは１ページめくるごとに、オーバーなくらいリアクションをしてくれた。
「え、待ってヤバいんだけど。これ文字プリントしたやつ貼ったんじゃなくて、全部手書きの上にマジックで清書してんの？！すごすぎない？！そのまま文字打ち込んだみたいなもんじゃん…これめちゃくちゃ時間かかったんじゃないの？」
丁度書いていたのは、クイズノックと学ぼうのライブ配信時に使うフリップで、25分集中-前半-や、5分休憩の文字をスケッチブックに書き起こしたものだった。
『いえ、こういう作業、割と好きなので…』
と言いつつ、時間をかけてしまったことは本当で、実は昨日は家に持ち帰って鉛筆の下書きを完成させていた。
「これならめちゃくちゃ見やすいし、すごい助かると思うんだけどさ」
スケッチブックを相変わらずしげしげと見ながら、一旦言葉を切った渡辺さんが気になって顔を見上げると。
「１年目で気合入ってるのは分かるけど、あんまり詰めすぎないようにね。ADって結構体力勝負なとこあるから、倒れたら大変だよ？」
閉じたスケッチブックを手渡すと同時に、見透かしたように、にっと微笑みかけられた。
「決ーめた！俺Aちゃんのこと見張ってるから、そのつもりで！無理してたらすぐ高松に言いつけるからな〜！」
じゃあ、と手を振られて、新人ADの私はただ呆然と、その背中を見送るばかりだった。
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作者名：SEN | 作成日時：2021年10月16日 0時
