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乾に繋がれた手が、不意に引き寄せられた気がした。


『あ、わ、えっ?!』


そこまで勢いをつけて飛んだはずではなかった身体が、乾の胸に飛び込んで行ってしまう。

着地したと同時に思わず浴衣に抱きついてしまった時、もう、頭はパニック状態で。


『ご、ごめん!ちょっと、その、勢いがつきすぎちゃったみたいで!!』


誤解だからと、慌てて胸の中から離れようとすると、グッと腰を手で抑えられてそれ以上身動きが取れなくなってしまった。


『い、乾?』

「違うよ」

『えっ?』

「俺がこうしたくて、引っ張った」


耳元で小さく呟かれた言葉に、耳を疑った。

頭の理解が追いつかなくて。


『な、んで…?』


そう言葉にするのがやっとだった。


「さぁ…。なんでだと、思う?」


そっと体を離されて、乾と向き合う。

笑っているように、泣いているように。

愛しげに、でも、寂しげに見えてしまった瞳が揺れる。


その刹那。


あぁもしかしたら。

私も乾も案外。

似た者同士なのかも。

なんて。

何かがすとんと。

胸の中に落ちた。


『あまのじゃく』


乾の浴衣を引っ張って、煩い鼓動には気づかないふりをして。

耳元で、同じように呟いてやった。

パッと手を離すと、目を見開いた乾と目があって。

ゆっくりと、その瞳が笑みを取り戻して行った。


「どっちが」


互いに笑いがこみ上げて、思わず声を出して笑ってしまう。


「そこぉー!!イチャイチャすんなぁー!!」


既に中洲についていた渡辺さんからの声ではっと我に帰ると。


「してませーん!!偶然でーす!!」


乾が渡辺さんを振り返りながら、何でもなさそうに反応を返した。


「ま、とりあえず、向こう岸まで繋いでるよ」

『また渡辺さんになんか言われるよ?』

「いいんじゃない?なんて言われても」

『ふーん。誤解されてもいいわけだ』

「誤解じゃなさそうなんで、別に」


そう言って、どちらともなく手を取り合って、再び飛び石を渡る。

この関係に、先に名前をつけるのはどちらだろうか。

そんな遠くて近そうな未来を、今から楽しみにするのも、いいかもしれない。

なんて、ね。



・補足・
京の七夕ロケのオープニングは多分四条辺りの鴨川だと思うのですが、今回の設定では、出町柳の鴨川デルタでオープニングを撮りかけるも、人が多かったのでその後四条に移動して撮りなおしたという想定で書きました。
文章中で表現出来ずすみません…。


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作者名:SEN | 作成日時:2021年10月16日 0時

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