「だ」で始まる一番言いたいこと【QK】

ダーリン ページ40

少し遅めのお昼休憩を伊沢さんからもらって、私と彼で一緒にレストランに食事に来ていた。

　周りはカップルか、女子会か、そういう人たちが多いように思う。
　私たちもカップルかなんかに見えているだろうか。

　「Aちゃんはなに食べたいの？」

　食べたいものがあったというよりも、ダーリンと来たかったから、選んだお店だ。

　「うーん、これですかね」

　私は適当にメニューの一番上に書いてあったおすすめを指さした。
　それから頬杖をついて「ダーリンはどうします？」と聞き返す。

　「俺はねー、こっちのかな」

　ダーリンは隣に書いてあった本日のメニューとやらを指した。
　たしかにそっちも美味しそうで、私が迷ったものだった。

　「ね、ダーリン」

　「ん？ どうした？」

　ぱくりと牛肉の赤ワイン煮を口にしたダーリンがこちらを向く。
　私は自分の食べていたフィレ肉のステーキを差し出す。

　「ひとくち、交換しませんか？」

　私としては、結構大胆なことをしているつもりだ。
　ダーリンと呼ぶのも、ご飯に誘うのも、料理を交換するのも、ぜんぶ。

　だけどダーリンにとっては、ぜーんぶ子供の戯言に聞こえているに違いない。
　だっていままで一度たりともそれらしいリアクションはもらえなかったんだもの。

　「はは、食べたいの？ いいよ」

　はいと、牛肉を刺したフォークを向けられる。

　ほらね。
　私はあーんひとつでこんなにもドキドキしてしまうのに、ダーリンはなんてことないみたいな顔。

　「なに、食べないの？」

　ダーリンは余裕な表情で、私の顔を覗き込むようにする。

　真っ赤になってしまった私のほっぺを見て、ダーリンはどう思っているのだろう。

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