僕の好きな人は、会社の先輩 (ページ13)

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先輩と傘ページ13

(今更ながらの時系列ですが、ここはabc大会前、次の話から現在だと思ってください)

問side

斎藤さんと2人きりになって、お菓子を食べてもらえたあの日かははや一ヶ月。あの日以降、お互い忙しい為オフィスでもすれ違う日が続いてる。斎藤さんと話す口実だったお菓子も、会えないなら意味もない。そんな僕の暗い気持ちを読み取ってか、今日の天気は荒れそうだ。

「問ちゃん、帰らないの？」

「ん〜、まだやりたい事があるしいいや。言ちゃんこそ、明日は東大王の撮影でしょ？早く帰りなよ」

空が真っ暗すぎて分からないけど、今の時間は午後の6時を過ぎたくらい。ほかのバイトの人達も帰って、残っている学生は僕達くらいだった。

「そうなんだけどね。傘、忘れてきたみたいなんだよね」

「え〜。何やってんのよ、全く。
　僕の置き傘使って帰りなよ」

「問ちゃんはどうするの？」

「僕は折り畳み傘あるから、大丈夫。ほら、雨が酷くなる前に急ぎなよ」

「ちょっと！もう、わかったよ。無茶、しないでね」

「ん、わかってる」

流石、僕じゃない僕だな。斎藤さんに会えない焦りプラス、最近仕事もクイズも行き詰まってるのに気が付かれてたんだ。はぁ、もう直ぐ大会なのに。これじゃ、斎藤さんが言ってたカッコいい僕になれないじゃん。

「ふぁ〜」

ここ最近は夜遅くまで起きてる事が多かったからかな。やっぱり、早く帰って寝ようかな。

「、、、！？あれ。傘が、ない」

嘘。折り畳み傘、入れ来たはずなのに、、、そうだ。朝から寝ぼけて、オフィスに置き傘があると思って置いてきたんだ。やらかした。雨は、止む気配ないよね。

「本当、ついてないな」

こんな状況でも、眠気の方が勝ってしまう。こんなに疲れてたのかな？

「せめて、雨が止めば」

言ちゃんが帰った時よりも激しい雨音を聞きながら、目を閉じる。そのまま、僕の意識は遠のいていく。

「本当、頑張り屋さんだね。だけど、無茶だけはしないで」

！

「斎藤さんっ！」

静まり返ったオフィスに、僕の声が響く。あれ、誰もいないのかな。けど、さっき絶対に斎藤さんの声がしたのに。

「あれ、こんなメモここにあったけ、、、！」

僕のデスクの上には、まるでお手本のような丁寧で綺麗な文字で書かれたメッセージが置いてあった。送り主は、僕の好きな人。