神は緋色を身に纏うーkwmr×fkrー ページ6
kwmr side
今は何時だろうか。開けっ放しのカーテンのお陰で真夜中であることは分かった。
「〜〜〜っ」
乱暴に扉を開けて赤ワインを取り出す。沈みこんだ気分を忘れようとグラスに注いだどす黒い朱は、むしろ自分の血液と情けなさをいっそう想起させる。
「っがあぁ!!!」
とうとう耐えられなくなった俺は狂ったように刃物を探して左腕に押し付ける。スライドする度に焼けつくような痛みが創傷部に走る。
程なくして肘からぼたぼたと鮮血が垂れ始めるが気にしていられない。
5分か、10分か、あるいは永遠のような時間の後、僕の両手はだらしなく垂れ下がり、幾つも持ち替えた中の最後の刃物が音をたてて地面に落ちた。
はぁはぁと荒い息遣いが空に消える。
垂れ下がった左手からは相変わらずぼたぼたと鮮血が流れ落ちる。呆然としたあと、俺は新しいグラスを持ってきて鮮血を注いだ。
暫くして出血が止まる。だめだ、まだ足りない。もっと出さなきゃ。再び刃物を手にとって腕を襲う。そのうち痛みに耐えられなくなって左腕を強く握った。
びたびたと鮮血が散ったテーブルの真ん中に置かれたグラスは、並々と朱を湛えている。
,,,認識できる、ということは、
「おれは、まだ、いきてる,,,」
なんで。なんでだよ。
もう嫌なんだよ。生きてるだけで苦痛なんだよ。
生存権を主張するならタヒ亡権があったっていいじゃないか。満足な保障も、地位も、信頼も安心も何一つ得られないのに生かされるなんて拷問に等しいじゃないか。
人間は止まらない。世界はとまったままではいられない。
人の心は移ろいやすくてこの上なく脆い。人間は弱い。自分が標的にされたくないから、誰かを祭り上げて、遠ざけて、逆に表面上は愛想よくしてても、誰かを叩いて、バカにして生きている。
人間は汚い。権力をもった何者かが「あり得ない」と喧伝すればそれは正義になる。皆そらについていく。逆らえないんじゃない、分かってても逆らわないんだ。
トモダチなんて薄っぺらい。コイビトなんて簡単に消える。
全部わかってしまったんだ。見えてしまったんだ。
「もうやだ,,,やめたい,,,」
さすがに出血量が多かったのか、体から力が抜けてソファに崩れ落ちる。血にまみれた指先で、いまは恋人である人間に電話をかけた。
172人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
颯楓(プロフ) - 笹さん» わああありがとうございます!!!嬉しすぎて溶けそうです笑ちまちま更新ですがよろしくお願いします! (2020年8月18日 6時) (レス) id: 0a39adce2c (このIDを非表示/違反報告)
笹 - 初めてコメントを書かせていただきます! タイトルの付け方から本文までインテリジェンスが溢れてますね(( ymmtさんとko-chanのヤンデレが特に好きです! これからもぜひ作品を読ませてください!長文失礼致しました。 (2020年8月17日 22時) (レス) id: a74edc1ff9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:颯楓 | 作成日時:2020年8月9日 14時