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k-chan side
しばらく前、山本さんは別の人とお付き合いをしていた。性別は知らないけど、周りに公言していた(しかも結構ノロケていた)のを見る限り女性との恋愛だったのだろう。
当然俺の密かな思いなど通じるはずもなく、また伝える気もなかった。未来は知らないが今はまだマイナーな恋だ。俺の想い人は今、とても幸せなんだ。こんな思いを伝えたって、誰も幸せにならない。
―――と思っていた。
ある日の撮影後、気になったことがあって俺は山本さんを空いていた部屋に呼び出した。
「パーカー脱いでください」
「どうしたのこうちゃん、怖いよ？」
「いいから脱いでください。俺見えたんで」
半分ハッタリだった。俺の勘違いであってほしいと思っていた。でも結果はやっぱり想像通りで。
「その傷、自分でやったんですよね」
「んふふ、そうだよ。僕振られちゃってさ。全部否定されちゃってさ。元々僕に存在価値なんてなかったんだ。だからこれは妥当なんだ」
「そんなこと」
「正しいことやるのはとっても
理論が崩壊している。いつもの理知的な山本さんは欠片も存在しない。こんな状況で収録してたのかこの人。俺なら、俺なら―――
「貴方にそんな思いをさせないのに」
「こうちゃん？」
「俺は,,,貴方がっ、苦しんでいるのが嫌なんです。貴方を助けたい」
嗚呼、俺も大概だ。
「じゃあ、僕に傷をつけてくれない？」
「なんで」
「僕自身でもよくわかんないんだけど、自分の体が傷つけられるのがすごく気持ちいいんだ。ね、僕を苦しめないんでしょ？」
こんな弱味につけ込むなんて。
貴方にこんなことを言わせてしまうだなんて。
「いいですよ」
そこからこの奇妙な関係は始まった。
100均のカッターから始まって、デザインナイフ、釘、サバイバルナイフ、ピーラー、包丁、果てはノコギリや鉈まで。
自分ではつけられなかった傷をつけられ、真っ赤な海に倒れこんだ山本さんはとても―――――幸せそうだった。
そうか、これが彼の今の喜びなんだ。
俺は山本さんに幸せになって欲しい。だからこの選択は狂っていても間違ってはいない。
人の体を切り裂くときは、存外軽い音がする。
さく、さくと軽快に響く音を聴きながら、俺は彼に刃を突き立てる。
「,,,刺しますよ」
「ありがとう。大好き」
甘い甘い『大好き』に身を溶かしながら、抱きついた背中に風穴を開けた。
続く (更新停止中)
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颯楓(プロフ) - 笹さん» わああありがとうございます!!!嬉しすぎて溶けそうです笑ちまちま更新ですがよろしくお願いします！ (2020年8月18日 6時) (
レス) id: 0a39adce2c (このIDを非表示/違反報告)
笹 - 初めてコメントを書かせていただきます! タイトルの付け方から本文までインテリジェンスが溢れてますね(( ymmtさんとko-chanのヤンデレが特に好きです! これからもぜひ作品を読ませてください!長文失礼致しました。 (2020年8月17日 22時) (レス) id: a74edc1ff9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：颯楓 | 作成日時：2020年8月9日 14時
