存在証明ーymmt×k-chan ページ15
k-chan side
人の体を切り裂くときは、存外軽い音がする。
さく、さくと軽快に響く音を聴きながら、俺は彼に刃を突き立てる。
「,,, 」
「 。 」
――――――――――
「今日も、やりますか」
午後5時のオフィス。明日は土曜日なのも相まって残っていた人たちもパラパラと帰り始める。
山本さんに声をかけると、彼は俯きながら首肯した。
その肩が小さく震えているのに気づいた俺は無言で腕を撫でる。
彼の震えが止まったかわりに、ぴくりと体が跳ねた。
「おじゃまします。昨日もきましたけど」
「いつでも,,,どうぞ」
山本さんの家についた。モノトーンでこざっぱりと揃えられたその部屋は、うっすらと濡れていた。
「じゃ、僕はお風呂入ってくるので、準備お願いします」
「ふぅん、気が早いですね」
「だって」
言葉が切れる。そのまま後ろを向いた彼の体は全身震えていた。
そのまま逃げるように風呂場に駆け込む。しばらく水音がしてから、彼が風呂場で「踊る」音が始まった。やっぱりな。
いつもより早く聞こえてきたそれを合図に俺も準備を始める。
すっかり慣れた彼の家。迷わずに棚の隙間を探って細長い袋を取り出した。昔は片手で軽々と持ち上げられたそれは、もう両手でないと引きずることもできない。中身違うし。
丁寧に磨いて、錆を落としていると、後ろから体重がかかった。
「やま、もとさん,,,あの、俺が刺さります」
「そっか,,,こうちゃんが刺さっちゃったら、僕もうどうしようもないもんね。ね、早く始めよう?」
少し興奮気味な彼の体は酒も入っていないのにほのかに赤い。ほんとはもう少し手入れをした方が貴方は気持ちいいだろうに。仕方ないな、今日はこれでいいか。貴方が望むなら。
「いいでしょう、いきます、よっ!!!」
「ん"あ"っ!!!」
さっきまで丁寧に磨いていた包丁の一つを遠慮なく彼の腕に突き刺す。顔をしかめた彼はしかし嬉しそうな顔をしていて。続けて二本、三本と刃物を刺している間、血が滴って妖艶な声が漏れた。
「ん、ふふ,,,僕の血だぁ。へへへ、今僕ここにいるんだぁ,,,こうちゃん、ねぇ僕どうなってる?これ抜いてもいい?きっともっと血が流れるよねぇ、ね、いいでしょ?また刺して。背中でも、足でも、首でも」
「いいですよ、貴方がいいなら」
俺が言うより早く短刀が引き抜かれる。浅く刺さったカッターが抜ける。
だんだんと広がる血の海の中で、俺達は互いを抱きしめた。
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颯楓(プロフ) - 笹さん» わああありがとうございます!!!嬉しすぎて溶けそうです笑ちまちま更新ですがよろしくお願いします! (2020年8月18日 6時) (レス) id: 0a39adce2c (このIDを非表示/違反報告)
笹 - 初めてコメントを書かせていただきます! タイトルの付け方から本文までインテリジェンスが溢れてますね(( ymmtさんとko-chanのヤンデレが特に好きです! これからもぜひ作品を読ませてください!長文失礼致しました。 (2020年8月17日 22時) (レス) id: a74edc1ff9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:颯楓 | 作成日時:2020年8月9日 14時