抱擁と消失 ページ10
死ネタ警報発令。耐性のある方のみ。
case1
「もう、無理みたい」
そういって静かに笑う君は、白いシーツに負けず劣らず色がない。彼の周りに並ぶたくさんの機械と不穏なコントラストを描いていた。
「ふくらと恋人っぽいこと、なんもできなかったなぁ」
「はは、告るのに相当時間かけた俺が悪いよ」
「ま、しっかり考えを巡らせた上で大事にしてくれるのがふくらのいいところなんだけど」
俺が告ったのは河村に余命宣告が下った後だった。失くすかも知れない、なんて恐怖に背中を押されるとは俺も大概だな。
「おっけーもらえるなんて微塵も思わなかったし」
「俺はいつでも受け入れる準備してたけど？」
できてたなら早くいってくれよ、と言おうとして口を閉じる。
河村は完璧だ。悲観することなく将来を考え、やり残したことを動けるうちにやり、俺の場違いな告白も笑顔で受け入れてくれて。
それに引き換え、俺はいつまでも覚悟ができない。
「,,,やだよ」
「ん？」
「いかないでよ。俺たちまだ何も出来てない。どっか遊びにいくのも、美味しいもん食べるのも、キスだってハグだって」
「ふふ、わがままだな、ふくらは,,,俺だってまだ、いきたいわけじゃ、ない、のに」
段々霞んでいく彼の呼吸音に嫌な汗が背中を伝った。周りの機械がけたたましい音をたてる。
「んー、でも、ハグなら、間に合う,,,かな」
おねがい、と声にならない声が誘う。
俺はいつでも覚悟ができない。だから間に合わない。だからやりたいことが、彼の願いが、叶えられなかった。
一瞬、逡巡する。やがて意を決した俺は静かにベッドに被さった。
「ごめんね、河村,,,ありがとう」
哀別の念と共に、最初で最後の抱擁を交わす。
彼の口が小さく動き、やがて綺麗な笑みを浮かべる。同時に機械が命の終わりを告げた。
確実に消えていく温もりの感覚は、きっと一生忘れない。
ーーーfkr×kwmr
ーーー
ご無沙汰しております。
kwmrさん病院に突っ込みがち。よくない。
これからも更新頻度このくらいな気がするので、この話が全パターン書け次第また更新停止にしておきます。
表示だけなので更新頻度は変わりません。
よろしくお願いします。
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颯楓(プロフ) - 笹さん» わああありがとうございます!!!嬉しすぎて溶けそうです笑ちまちま更新ですがよろしくお願いします！ (2020年8月18日 6時) (
レス) id: 0a39adce2c (このIDを非表示/違反報告)
笹 - 初めてコメントを書かせていただきます! タイトルの付け方から本文までインテリジェンスが溢れてますね(( ymmtさんとko-chanのヤンデレが特に好きです! これからもぜひ作品を読ませてください!長文失礼致しました。 (2020年8月17日 22時) (レス) id: a74edc1ff9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：颯楓 | 作成日時：2020年8月9日 14時
