クンツァイトの慈愛【QK】 (ページ16)

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尊　　愛ページ16

kwkm side.

川「伊沢さん、ありがとうございました。」
次の日、オフィスに出向き、主語もなくいの一番に伊沢さんに伝えて席に着く。
なんのこと？と言わんばかりの伊沢さんの表情は少しだけ面白くニヤけてしまった。

川「話してきました。」
伊「告白は？」
川「は？」
伊「え？YouTube活動やめるってだけいってきたの？告白はしなかったの？」
川「…するわけないじゃないですか」
ため息をつき応える。告白？Aさんに？
彼女のことは好きだが、付き合いたいと考えたことはなかった。付き合ってどうする？あんな決意をして、大学を卒業して、彼女を幸せに出来る保証はない。卒業をして社員として働いて、今後どうなるかも想像出来ない。びっくりするくらい忙しくなるかもしれないし変わらないかもしれない。
それは誰にもわからないが、そこまで頭が回っていなかった。
考えるのを拒否していたのかもしれない。

伊「こうちゃんに先越されるかもよ？それか俺にも先越されても文句言えないよ？」
挑発ととれるその言葉に心がぐらつく。みんな彼女が好きなことは知っていたが、それぞれ好きのベクトルはどの方向に向いているかなんて分からなかった。
ただその挑発を聞き、本能的が「嫌だ」と叫んでいた。

伊「いま嫌だなって思っていたら行動はするべきだね。今すぐじゃなくていいからさ」
伊沢さんには頭が上がらない。全てを見透かしている上で俺の気持ちも彼女の気持ちも、心境もわかっているようなそんな素振りだった。彼女を見つけてきたのも彼、彼女との繋がりを作ってくれたのも彼なのだから。
川「伊沢さん、おれ本当に伊沢さんに感謝してます。」
柄にもないことを言うと、伊沢さんは窓を向き「今日は雨かな」なんて笑った。