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そうやってお祭りを楽しむ計画を立てた、二日後。“ちょっと来て”と彼の家に呼び出された。
『お邪魔しまーす』
「おかえり。…ただいまでもいいよ？」
間髪入れずにそう返されてちょっとだけ言葉に詰まった。
そりゃあ勿論、同棲とか結婚とかでそう挨拶する日が来たらいいけど。まだまだ先だろうしね？
『とっといてんの。』
「…残念。」
ふ、と笑った彼の顔はいつもより大人っぽくてきゅうと心臓を掴まれたような気がした。
『で、何で今日呼んだの？すぐ会えるのに』
“すぐ”と言ったのには理由がある。何せ一週間後にはお祭りが控えているから。
世間一般のカップルより遠距離恋愛をしてるカップルに近いスケジュールの立て方で。
彼の貴重な休みを全て奪うのは申し訳ないからと短ければ月一、長いと3ヶ月に一回のペースでデートの予定を立てている。
都合がよければ他の日も会う、みたいな。ゆるーい感じで。(笑)
嬉々とした表情で“こっち”と腕を引かれ、リビングに足を踏み入れる。
いつも通り生活感のないキッチン、ちょっと散らかったソファー、見慣れたものばかりある中に――見慣れないものが置かれていた。
『……浴衣？』
「正解！」
ルンルンと浮足立っている彼に背中を押されてソファーに腰掛けると、テーブルの上に散らばっている色とりどりの浴衣に視線を落とす。
『なんで浴衣？』
「祭り気分、味わうなら目でも味わいたくね？」
『しかも、なんでこんないっぱい…』
「友達が服の買い付けしててさ、実際見た方がいいって送ってくれた。買い取るのは今日決めたやつにしようと思って。」
ワクワクとした表情で“どれがいい？”と首を傾げる彼。
なかなかセレブな発言してますよお兄さん、とは言い出せず色とりどりの浴衣に視線を移した。
大人っぽい色と柄の組み合わせから、キレイ系、可愛い系、個性派……十数枚が乱雑に並ぶ中、目を引くひとつの浴衣。
『あ――』
「これ？」
手が止まった丁度のタイミングで拓司が浴衣に手を伸ばした。
白に近い水色に青や紺色の花が舞うそれを、じっと見詰める。
「これにする？」
『…いや、』
「気に入ったんじゃないの？」
『お母さんが着てたのと似てるなと思って』
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作者名：遊馬
| 作成日時：2020年6月13日 21時
