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ちっちゃいポーチから500円を取り出して列に並び、いちごとチョコのカップアイスを1つずつとスプーンを2つ貰って会場の外へ。
バックステージパスを付けていなくても入れる会場の隅っこの穴場スポットに顔を出すと、日陰に座って目を瞑る駿貴の姿があった。
『あ』
ぱくん、と口を塞いでも漏れてしまった声を消すことは出来ず、ゆっくりと彼の目が開いた。
「……A?」
『寝惚けてるの?』
「ちょっとね」
目を擦る彼の隣に腰掛けるとすぐに少し距離をとられる。…これも、いつものこと。
『…もー。同じくらい汗かいてるし気にしないでいいってばぁ』
「Aにおじさんって思われたらやっていけないのよ俺は」
『思いません!』
「わ、コラ。」
ぴょんと飛びつくと大きな体でしっかりと私を支えてくれる彼。香るのはお日様と駿貴の匂い。
買ったアイスを彼の首元にくっつけると、情けない声を上げて飛び上がった。
『っふ、はは!』
「…!あなたね、」
『わっ』
ぐんと腕を引かれて彼の腕の中にすっぽりと納まる私。
真剣な顔が急に近付いてきて、心臓がどきどきと煩くなる。汗に濡れた前髪がセクシー…とか言ってられない!
ぎゅっと目を瞑ると当時に鼻をつままれて、“なんだイタズラか”と目を開けたところで不意にキスが落とされた。
「隙あり。」
そう言って口角を上げる駿貴は、真夏のギラギラした太陽を味方につけてるみたいな顔で笑った。
「順番逆になっちゃったけど、ステージお疲れ様ね」
『…ん、』
「照れてないで、食べたら戻らんと」
『…うん』
「…あんま惚けてたらもっかいキスするよ」
『…う、――え?』
適当にうんうんって頷いてたらまたちゅって軽いリップ音が響いて、わざわざ持たせてくれたスプーンが地面へ落ちる。
「あ、」って同じように下を向いて、土で汚れたスプーンを見詰める。ああ、やっちゃった。
アイスクリームを取り出した空のビニール袋に落ちてしまったスプーンを入れたのを見て「もう一個、貰ってくるよ」と声をかけた。
瞬間、手首を引っ張られて腕の中に閉じ込められる。
「まぁ、ふたりで一つで良いじゃん」
って駿貴がくしゃりと笑顔を浮かべて。
腑に落ちないまま甘いアイスクリームと駿貴の腕の中に沈んだ。
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作者名:遊馬 | 作成日時:2020年6月13日 21時