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hand clap #1 sgi ページ4

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 ステージから見下ろして会場をぐるりと見渡すと一目で見付けちゃう、私の愛しい人。

 分かりやすいくらいノリノリで、ぶんぶんと長い腕を振っている。


 彼が好きなアイドルと違ってバンドを組んでる私にはペンライトとは縁遠いけれど、「俺が心ん中で振り回す!」って言葉の通り楽しんでもらえてると思うと思わず笑みが零れた。


『夏はまだまだ始まったばっかだよ!盛り上がろう〜!』


 って声を張って、コールアンドレスポンスで盛り上がれる私たちの代表曲のイントロが流れた。


 ギターのリフ、ベースの心地良いコード、シンセの甘い響き、ドラムが刻んでくリズム――。

 マイクを持つ私が左手を空に突き上げると一瞬音が止んで、話すみたいにサビのワンフレーズを歌う。歯車が噛み合うように私の声の最後の音と楽器が重なって、ズドンとかっこいい音と歓声に包まれた。




 これだから、私は音楽が好きだ。


 夏のフェスが好きだ。




 突き抜けるように高い空へ叫んでも煩いと言われないし、盛り上がる会場の熱は夏の蒸し暑さと違って気持ちいい。

 屋外のステージも、滴り落ちる汗も、いつもよりテンションが上がっちゃうこの感じも。全てこの夏限りの出来事でキラキラと輝く宝物みたいに思える。




 私たちのステージが終わって他のバンドがステージに上がるのを見ると、まだ歌いたいと煩く鳴る心臓。その音を無視してテント内のパイプ椅子に腰掛けた。


 あぁ、生きてる!…って思わされる。心を揺さぶられる。
 このフェスがずっと続けばいいのにってステージを終える度に思う。


 寂しさが急に姿を変えて、きゅうと愛おしくなる。


 ふわり。

 駿貴の笑顔を思い出して、そっとテントから抜け出した。


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 フェス限定のTシャツとタオル、ラバーバンドを付けた私はこの会場によく溶け込む。駿貴から借りたキャップを被ってしまえば顔も見えないし、変装としてはまずまずだろう。


『あ、アイス。』


 …というかまさかステージを終えたばっかのアーティストが、こんな混みあってるフードコーナーにいると思われないのかも。


 並ぶ前にスマホを取り出して手短にLINEを送る。
 “いつものところ集合!”って。3年目だから使える言葉だね。


 くすりと笑ってポケットにしまうと、アイスクリームの屋台の列に飛び込んだ。


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作者名:遊馬 | 作成日時:2020年6月13日 21時

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