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駅直結のビルを抜けて、近くのショッピングモールに足を踏み入れる。
『あれ……変わった?』
「工事やっと終わったってニュース見てない?」
『え?見てないけど前来た時となんか違う気がした!』
「勘が鋭い。」
『やった』
そう話してふふと笑い合う。…そう言えばここ 付き合ってなかった頃に買い出しにきたな、なんて思い出して懐かしく感じた。
昨日今日と昔のことをよく思い出すなぁと思って、彼の後ろをついて行く。
私の手を引いてくれているけどぴったり寄り添うように並んで歩くのは恥ずかしいみたいで、いつも通り歩くスピードは早めだった。
「寄りたいところあるから着いてきて?」
と言われて断る理由もないし二つ返事で了承すると、有名なジュエリーショップに入っていく拓哉くん。
『え?ちょ、』
「いいから、着いてきて」
聞きたいことは山ほどあるのに喉元で止まって出てこない。
そうこうしてる内に店員さんを呼び止めた彼は“河村ですけど…”と名乗って奥の方へ案内された。…私は訳が分からないまま後ろをついてく。
『拓哉く…、』
「こちらでお間違いないでしょうか?」
「あ、はい。Aさん、付けてみて」
『え?』
「こっちから。はい」
キラキラと光る宝石が埋め込まれたネックレスを店員さんが当ててくれる。
片方は飽きの来ない細めのチェーンに小ぶりの石、もう一つはシンプルだけどちょっと変わったデザインのもの。
当てられたネックレスはどちらも可愛かった。
…けどいきなりの状況についていけなくて、目を白黒させていると“こっち向いて”と拓哉くんが手を引いた。
『……あの?』
無言でじっと見つめられて顔に熱が集まるのを感じる。うう…何この状況?
「こっち、包んでください」
指さした方を店員さんが持ち上げてこくりと頷いた。“少々お待ちください”という声で我に返った。
『ちょっと、なにこれ…!』
「何って?」
『ご飯じゃなかったの?ネックレスとか聞いてないってば』
「…飯は口実。イメージだけで似合いそうとか決められないからさ」
小さく零された“どうせなら気に入って貰いたいし”という言葉にきゅんとする。
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作者名:遊馬 | 作成日時:2020年6月13日 21時