大好きな【川上】

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「そろそろ、戻りますか」

1時間ほどお話して、席を立つ。
自分の分を払うと言ったら、「川上に怒られます」とよく分からない静止をされた。(結局奢ってもらった)

オフィスに戻ると、玄関にはいつもよりたくさんの靴が並んでいた。
しん、と静まり返ったオフィスに少し不信感を抱きながら、部屋の扉を開けた。

「「「おめでとーーー！！！」」」

パァン！
弾ける音と視界に広がるカラフルなリボンがクラッカーのものだと理解するまでには、数秒を要した。
ホワイトボードには、「片口A生誕祭」の文字。
あ、……私、今日誕生日だ。

うっかり携帯をオフィスに忘れていて(今思えば誰かに隠されたのかもしれない)、友達からのメッセージ等も見ていないものだから、忘れてしまっていた。

「おめでとう、Aちゃん。びっくりした？」
『あ、はい、とても……』

伊沢さんに声をかけられて我に返り、部屋を見回す。
動画出演メンバーだけでなく、私と仲の良いライターや、鶴崎くんなんかもいる。
みんながにこにこして、私を見ている。

「プレゼントターイム！」

河村さんの号令で、みんなが次々とプレゼントを手渡してくれる。(持ちきれるはずもなく、一度受け取ったら床に置かせてもらった)

伊沢さんは、ブランド物のパーカー。
福良さんは、可愛らしいマグカップ。
河村さんは、以前一緒に気になると話していた本。
こうちゃんは、立派な万年筆。
山本さんは、大きなうさぎのぬいぐるみ。
須貝さんは、ダークブラウンのキャスケット帽。
水上くんは、オススメだというクイズの参考書。
鶴崎くんは、凝った作りのお洒落な栞。
他のみんなも、可愛らしくラッピングされたプレゼントをくれて、途中から涙を堪えるのに必死だった。

「まあ、締めは王子様っしょ！」
「プレッシャーなるんでやめてください」

川上さんは、ムッとした表情に似つかわしくない、綺麗な花束を持ってきた。
……赤い薔薇が、9本。

「誕生日、おめでとう」
『ありがとう、ございます』
「俺、Aが思ってる以上に、Aが好きやよ。お前がおらんかったら、味気ない人生やったろうなと心から思い、ます。QuizKnockを好きになって、東大に来て、俺を好きになってくれて、本当にありがとう」

赤い薔薇の花言葉は、言わずもがな。
それを9本…

「愛してます。ずっと一緒にいてください」

彼が私を抱きしめたのと、私が涙を零したのは、同時だったと思う。

大好きな彼との、これからを願って。

(Fin)

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