大好きな【川上】

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「山本、Aちゃんとそろそろ話したいんだけど、いい？」
「あ、伊沢さん。お仕事のお話ですか？」
「うん。１回話さないとね」

じゃあ別室に、と手招きされ、席を立＿＿

「おれも、いく」

＿＿とうとしたんだけど……この人は。

『川上さん？どうしたんですか、今日』

この天使は、私のトップスの裾を持って離さない。
私より背高いのに上目遣いするのやめて欲しい……。

「なんもない。一緒にいく」
『え、あの。伊沢さん、いいんですか？』
「ふっ、川上、ふふっ、いいよ別に」

耐えきれないようにひとしきり笑った伊沢さんは、笑い涙を拭いて小さな部屋の扉を開けた。

伊沢さんと真面目な話をした訳で、もちろんその話は滞りなく進んだし、私のこれからの役割もはっきりしたわけだが＿＿話の間中、私の髪を梳きながら携帯を片手でいじっていた川上さんが不思議すぎる。
伊沢さんはときどき川上さんの方見て笑ってたし、伊沢さんが笑うと川上さんは私の髪を軽く引っ張ってきた。わけわかんない。


そんな意味のわからない時間も終わり、2時くらいから、動画の撮影が始まるらしい。

「一本目は、伊沢、川上、山本、須貝で。はーい、位置について〜」

河村さんが声をかけると、はーい、とみんながいいお返事。
＿＿私の後ろにいる人以外は。

「はい、川上。離れて離れて」
「……えー。片口さん、出えへんの」
「一本目は見学。二本目から出てもらうから、ほら」

渋々と言った様子でふくらさんに私から剥がされる川上さんの様子が面白いのか、伊沢さんを初めとしたみんなはずっと爆笑している。
川上さんから解放された私は、こうちゃんに招かれて撮影が見える場所に座り込んだ。

「片口さん。大変ですねぇ」
『川上さん、いつもあんなのなんですか？』
「まさか。初めて見ました、めっちゃおもしろいし」

思い出し笑いでツボったこうちゃんは放っておいて撮影風景を見学する。

「はぁいどもくいのっへんしのいざですっ」
「……川上でーす」
「山本ですっ」
「ナイスガイの須貝でーす！」

『わあ、本物の挨拶……！ちょっと感動です』
「片口さん、次の動画から出るんでしょ？挨拶、決めとかなきゃね」

あ、そうだ。私、まだライターじゃないしなぁ……。

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