25 ページ25
川上さんは、とてもいい声をしていると思う。
落ち着いていて聞きやすい、「男の人」の声で、すごく好きだ。
……だから、電話は……やばかった。
供給過多により精神的に参っているうちに、部屋の前に着いた。
『ここです。山本さん、ありがとうございました』
「ううん、これでも僕男だから。いつでも頼ってね」
君は他に、頼るべき人がいるけどね。
彼には全部、見透かされているような気がした。
彼が零した言葉には気付かないふりをして、おやすみなさい、と別れを告げた。
『はぁ……疲れた』
化粧を落とし、シャワーを浴びると、つい気が緩んで、そんな言葉が漏れた。
……気づいてる。私はそんなに、鈍感じゃない。
川上さんの好意は、需要しかないのだが、ちょっと私には抱えきれない。
出会ってたった三日の私をなんでこんなに気に入ってくれてるのか、欠片も思いあたる節がない。
でも、それを訊いて……離れて行ってしまうのが怖いから、触れないでいたいのだ。
川上さんの好意の理由については考えを放棄して、私は眠りについた。
「……おかえり、山本」
「あれ、川上さん。寝てなかったんですか」
オフィスの扉が開き、山本が帰ってきたのと同時に、不穏な空気が流れた。
俺__伊沢拓司は、面倒事には関わるまいと、黙って2人を見守ることにした。
「何も、してへんやろな」
「してないですよ、僕、今日会ったばっかですよ?」
ならいい、と川上は缶ビールを煽る。
今日会ったばかりにしては、気にしてるように見えたけど。つい、そう言うと、山本はこっちを見てへらっと笑った。
「ちょっと、初恋の人に似てて。それだけです、別に、取るつもりとかじゃないんですよ。むしろ、幸せになってほしいなんて思うし」
「……じゃあ、取らんでくださいよ」
「取らないし、取れないですよ〜」
ほんとにその通りだと思う。
どこからどう見ても相思相愛なのに、なんでこの男はこんなに不安そうなんだろう。
「壊したくない、汚したくないんです。彼女、繊細やし綺麗やから……本気なんです、取らんでください」
これ、彼女が聞いたら泣いて喜ぶんだろうなぁ、なんて思いながら、山本に缶ビールを渡した。
_____________________
お気に入り登録者数が200人を超えました、
本当にありがとうございます……!
たくさんの人に読んでいただけて嬉しいです。
988人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「QuizKnock」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りんり(プロフ) - 莉華さん» ですので、莉華さんが良ければ、非表示を解除していただいても私が口出しするものではありません。もし気になる読者様から指摘がありましたらこちらで対応しますので、ぜひ気にせず執筆を続けていただきたいです。ご迷惑お掛けしました。 (2020年6月28日 23時) (レス) id: 5d8255529d (このIDを非表示/違反報告)
りんり(プロフ) - 莉華さん» 返信が遅くなってすみません。また、わざわざ当作品を読んで下さり、対応ありがとうございます。私自身当作品が大して独自性のあるものとは思っていませんし、似たような作品ならむしろ読みたいくらいです。(↑続きます) (2020年6月28日 23時) (レス) id: 5d8255529d (このIDを非表示/違反報告)
りんり(プロフ) - yukiさん» 返信がたいへん遅くなってすみません。報告、ありがとうございます。 (2020年6月28日 23時) (レス) id: 5d8255529d (このIDを非表示/違反報告)
莉華(プロフ) - yukiさん» 当事者です。この作品のことは全く存じ上げておらず、作品を作成しておりました。りんり様のこちらの作品を読ませて頂きましたが、自分でも凄く似ているな、と思いました。当該の作品に関しては非公開という形にさせて頂き、修正致します。大変申し訳ございません。 (2020年4月25日 20時) (レス) id: 907e72034e (このIDを非表示/違反報告)
yuki - すみません。似たような作品が作成されていますよ。(莉華様の「川上さんが甘々なんですが。」という作品です。) (2020年4月25日 0時) (レス) id: e5bfab260f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:りんり | 作成日時:2019年1月26日 22時