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箸を持つほうの手で愛してほしい(izw) ページ22

キーボード叩く音だけが二人きりの空間を埋めていく。

感染症拡大予防のために在宅の仕事に切り替えた彼の部屋にお邪魔している。
同棲しているとはいえ、彼は多忙ですれ違う生活が続いていた。
だから、ゆっくりと一緒に過ごせる上に、仕事している彼の傍にいれるなんてラッキー、と思っていた。


…数分前までは。

ちらり、とパソコンとにらめっこしている彼を見てみる。
その表情は真剣で、テレビで見せる爽やかな笑みや私の前で人懐っこく笑う顔とはまた違ってドキドキする。
けれど、一緒にいるのにお互い違うことをしているのはさみしい。

目の前にいない時は仕方ない、と言い聞かせることができたが、目の前にいるのに我慢するのは難しい。

「たーくし、くん」
「んー?」
「…お昼ご飯何食べたい?」
「肉」
「アバウトだなあ」

読書を再開するふりをして視線を拓司くんから外す。
それに倣って彼も仕事再開する。
関心が私からまた離れてさみしくなる。

こっちを見てほしい。
名前を呼んでほしい。
大きな手でくしゃくしゃと髪を撫でてほしい。
あわよくばキスだってしたい。

…何を考えているんだろう私。

邪な気持ちとめんどくさい女になりたくない気持ちでいっぱいになって。

「どこ行くのA」
「お昼つくりに行こうかなって」

ふーんといって拓司がこちらをじっと見る。

「A、こっち来てよ」


どうして、という前に体が勝手に動いてしまうんだからどうしようもない。


「どうしたの拓司」
「やっぱ昼飯いらない」
「お腹すいてないの」
「Aさん食べるわ」
「…拓司くんもそんなこと言うんだ、意外」

むっとふてくされたような顔をして彼が私の手を掴む。

「さみしそうにしてたのはAじゃん」
「わかってたのに無視してたんだ」
「可愛くてちょっと意地悪した、ごめん」


おいで、と彼が膝を軽くたたく。
それに甘えて膝の上に彼の方を向いて乗る。



すかさず降ってくるキスに応えて、これからの甘い時間を考えて目を閉じた。









お題はリリギヨ様よりお借りしました。
お気に入り300人ありがとうございます。
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ちょこ(プロフ) - ゆずりはさん» 一気読み…!?私の短編集かなりの量あるのに…!!こちらこそありがとうございます…! (2020年3月29日 17時) (レス) id: 87290c21e3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずりは(プロフ) - ちょこさん» ちょこさんの短編集、すごく好きで春休みに一気読みしてたので本当に嬉しいです…!ありがとうございます。 (2020年3月29日 17時) (レス) id: 85784e0324 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - 1話目から引き込まれ一気読みしてしまいました…!!すごく素敵でそれこそ心がぽかぽかするようなお話ありがとうございます!これからも楽しみにしてます! (2020年3月29日 11時) (レス) id: 87290c21e3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずりは(プロフ) - ゆあさん» 変換ミスしていました、ごめんなさい。ご指摘と応援ありがとうございます。 (2020年3月28日 8時) (レス) id: c31ae16b08 (このIDを非表示/違反報告)
ゆあ(プロフ) - 細かくてごめんなさい、川上さんは「拓郎」ではなく「拓朗」ですよ!いつも作品楽しく拝見させていただいております、これからも頑張って下さい! (2020年3月27日 22時) (レス) id: cc0713ac7a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆずりは | 作成日時:2020年3月18日 21時

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