肉じゃが(ymmt) ページ19
「よしあきくん今日こっちに帰ってきたって」
キッチンに立つ母の言葉にそうなんだ、と適当に返事をする。
昔の私だったら大はしゃぎしている、確実に。
5つ年が離れている彼は、お互いの母親同士の仲が良かったため、よく家に来て遊んだり勉強を教えて貰っていた。
「あら、もっと喜ぶと思ってたわ」
あんた、よしあきくんの事ばっかり話してて結婚するとか言ってたじゃない、と母がタッパーに肉じゃがを入れながらこちらを見る。
「それはもう昔の話じゃん」
そう、昔の話。
母は何だか寂しいわねなんて言うけれど、あれは恋とか結婚とかそんなものよく分からなかったから言っていたわけで。
本当に好きになってしまったら口に出せなくなる。
「あ、これ山本さんの家に持って行ってくれない？」
「なんで？」
「よしあきくんが帰ってきたけど入れ違いで、ご両親とも今日の夜居ないらしのよ。だからゆきさんに夕飯の事たのまれたの」
ちなみにゆきさんとは山本さんのお母さんのお名前。
だからお願いね、と肉じゃがのタッパーを渡される。
ずっしりと重たい。
会えるのは嬉しいという気持ちと会いたくないという気持ちがごちゃ混ぜになる。
私は2回山本さんに失恋しているから。
失恋、と言っても告白して振られた訳では無い。
彼に恋人が出来て、静かに失恋したのだ。
一度目は彼が高校生の時。
私は小学生だった。
その時点で遠い男子校に通う彼に会える頻度はめっきり減っていたのだけれど、夏の花火大会の時、偶然出会った。
隣に可愛らしい女の子を連れてこちらに手を振る彼を見て泣きそうになった。
可愛い子だね、と笑う山本さんの彼女の浴衣が大人っぽくて似合っていて、自分の子供っぽいピンクの浴衣が嫌になった。
二度目の失恋は彼が大学生の時。
私は中学生。
東京の大学に行って少しした頃、彼に恋人が出来たと母から聞いた。
彼に追いつきたくて必死に中学2年生から勉強を始めていたのであまり気にしないようにしていたけれどやっぱり傷ついた。
受験が終わりほっと一安心していたところに、母親同士の会話で山本さんが恋人と別れたことを知った。
自然消滅だったらしい。
三度目の失恋はまだしていない。
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ちょこ(プロフ) - ゆずりはさん» 一気読み…！？私の短編集かなりの量あるのに…！！こちらこそありがとうございます…！ (2020年3月29日 17時) (
レス) id: 87290c21e3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずりは(プロフ) - ちょこさん» ちょこさんの短編集、すごく好きで春休みに一気読みしてたので本当に嬉しいです…！ありがとうございます。 (2020年3月29日 17時) (レス) id: 85784e0324 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - 1話目から引き込まれ一気読みしてしまいました…！！すごく素敵でそれこそ心がぽかぽかするようなお話ありがとうございます！これからも楽しみにしてます！ (2020年3月29日 11時) (レス) id: 87290c21e3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずりは(プロフ) - ゆあさん» 変換ミスしていました、ごめんなさい。ご指摘と応援ありがとうございます。 (2020年3月28日 8時) (レス) id: c31ae16b08 (このIDを非表示/違反報告)
ゆあ(プロフ) - 細かくてごめんなさい、川上さんは「拓郎」ではなく「拓朗」ですよ！いつも作品楽しく拝見させていただいております、これからも頑張って下さい！ (2020年3月27日 22時) (レス) id: cc0713ac7a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆずりは | 作成日時：2020年3月18日 21時
