お揃いをもらうまで

時間をください ページ9

「今日伊沢さん泊まりですか？」

「この調子だとそうなるね」

「じゃあ、私も今日ここ泊まりますね」

「え、まじ？」

「まじです」


Aがオフィスに泊まるのは初めてではないけど、
特に泊まる理由なんてないんじゃないか？
仕事は有難いことに全部やってくれてるし、見たところ抱えてる課題もなさそうなのに


「なんとなく、伊沢さんとオールナイトしたい気分なんです」


これは別にやらしい意味とかではなく、
Aが何かに悩んでいるという証拠

俺に話を聞いて欲しい時はこうして夜時間を作る


「分かったよ。じゃああと１時間くらいで用事済ませるから」

「ありがとうございます」


別部屋にはA専用のお泊りボックスがあって、
必要なものは全部そろっているらしい

女子って大変だよね



シャワーを浴び終えたAが部屋に戻ってきて、冷蔵庫に入ってるビールを２本持ってソファに深く腰掛けた

「早速飲んじゃっていいですか？」

「いいよ、飲も」

２人で軽く乾杯をしてグビっと一杯


「で、今日はどんなご相談を？」

「んー。相談ってわけじゃないんですけど、いいですか？」

「なになに？」

「なんか、私も伊沢さんもあんまり睡眠取れてないなと思いまして。私なんてこの間ソファで爆睡事件もありましたし」

「俺的には必要最低限の睡眠はとってるつもりなんだけどな」

「でも傍から見ると顔色は良くないですよ。だから、今日は私に時間をもらったんです。もう寝ましょう」

「え、もう？」


てっきりお酒を飲みながら夜を明かすものかと思っていたが、Aはそうじゃなかったらしい


「今日は何もなしです！寝ます！ほら伊沢さんは布団持ってきてください！」

「お、おう」


Aのごり押しに負けて、渋々布団を準備する
…もうちょっと飲みたかった


「じゃあ電気消しますよー。あ！スマホは禁止ですからね！」

「ええええ」


今回のAちゃんは中々に厳しいおかんだった


電気が消されて真っ暗になるオフィスはちょっと新鮮
てか、暗い部屋に男女っていいのか？なんて思ったけど、Aだから大丈夫なのか

まさか俺の身体を気遣ってくれてるとは思わなかったし、
正直その気持ちがすごく嬉しかった


「ちゃんと寝てくださいね」

「Aもちゃんと寝ろよ。襲うなよ」

「私が襲うのは川上さんだけです」

「ちっ」

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